[書評] 天野和公『ブッダの娘たちへ 幸せを呼びさます「気づき」の仏教』

ノーベル平和賞受賞者、アウンサンスーチー氏の来日などもあり、今までになくミャンマーへの関心が高まっている。

本書の著者、天野和公氏は1978年、青森県生まれ。東北大学を卒業後、夫である雅亮師と共に仙台市に単立寺院「みんなの寺」を2002年に開山。お二人ともお寺とは関係のない普通の家庭に生まれながら、持ち前の努力と智慧で寺院の運営を軌道に乗せてきた。

普段は「みんなの寺」坊守(寺嫁)であり、三人の子供の母として多忙な日々を送る天野氏だが仏道修行への意欲は人並み外れて強く、2004年にはミャンマーの僧院(瞑想センター)で尼僧となり、のべ3ヶ月滞在。修行の結果、ミャンマー仏教探求の意志を益々深めた天野氏は帰国後ミャンマー語を半独学で習得。現在では忙しい毎日の合間にミャンマー語の仏教書を繙き、見識を深める日々を送っている。

本書のタイトル『ブッダの娘たちへ』はミャンマーの著名な僧侶、ターマネジョー師の著作のタイトルから採られたという。天野氏によれば、ターマネジョー師の著作は在家の女性向けに役立つ記述をパーリ三蔵経典から抜き出し、ターマネジョー師自身が出会った注目すべき女性修行者たちの逸話を交えて解説したものであるという。在家の女性が幸せに生きる道を求める際に、大変に参考になる本といえるだろう。

だが、本書はターマネジョー師の著作の直接的な翻訳というわけではない。本書には、ターマネジョー師を始めとしたミャンマーを代表するサヤドー(長老)方の珠玉の言葉が天野氏の学識により縦横無尽に引用され、より立体的かつ現代的な観点から、さまざまなアドバイスが得られるようになっている。その点、ミャンマーの読者を対象に書かれたターマネジョー師の直接的な翻訳より、現代の日本人にとってむしろ読みやすくなっていると言えるだろう。

さらに興味深いのは、本書にはミャンマー仏教界屈指の名僧との誉れ高いウ・ジョーティカ師の言葉が随所に引用されている点だ。本書を読んでウ・ジョーティカ師の教えに関心を持った方は、師の電子書籍『自由への旅』を読まれるのがいいだろう。下記から無料で入手することができる。

ウ・ジョーティカ『自由への旅』

ミャンマー仏教の紹介は、まだまだ未開拓の部分が多い分野だ。豊かな才能を持った天野氏の今後のより一層の活躍に期待したい。

投稿者:星 飛雄馬
1974年、長野県生まれ。著述家・翻訳家。東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程修了。東京大学社会情報研究所教育部修了。修士(社会学)(東京都立大学、2001年)。専門は宗教社会学、社会政策。著書に『初期仏教キーワード』(サンガ)、『45分でわかる! 数字で学ぶ仏教語。』(マガジンハウス)、訳書に『手放す生き方』(サンガ)などがある。Twitter: @humahoshi
Comments