最初に、福島の原子力発電所の事故で、被曝をされた方、避難をされた方に、心からのお見舞いを申し上げたいと思います。福島の原子力発電の恩恵を受けていたのは、東京電力の供給を受けていた、首都圏在住の私たちです。そのことに対して、あまりにも自分たちが恩恵を空気のように感じていて、感謝を忘れていたことを、強く恥じています。

そしてその上で、今回の事故が作ってしまったリスクについて、私がどうしても、多くの方に伝えたいと思っていることがあります。それは、

「リスクに過剰反応することで、リスクがリスクを招くことを避けたい」

ということです。

津波以来、報道される内容は、発電所から漏れ出た放射性物質の分量、各地の測定値、水や農作物その他に出ている基準値を超える値などです。これらのニュースを聞いていますと、不安になるなというほうが難しいでしょう。

そして、これらのニュースフローの結果、基準値を超えた作物などの実際の出荷停止だけではなく、風評被害も広がり、原発周辺の農作物や水だけではなく、東日本、あるいは日本全体が危険なような印象を与えてしまっていると感じています。また、在日外国人の多くが日本から帰ってしまったことも、印象に拍車をかけているのかもしれません。

しかも難しいことに、現状において、さまざまな基準値が、かなりの安全係数を伴ったものであることについて話をしても、例えば福島原発が5.7メートルまでの津波しか想定せずにそれが破られたように、「基準値は信用出来ない」ということになってしまいます。

もちろん、津波に対する基準が誤っていたこと、その誤りがブレークされたときに他の安全弁が働かなかったことについては、リスクマネジメント上の大変な過誤であることについて言い訳はできないと思います。

だからといって、すべてのリスクマネジメントが信用出来ない、となってしまうと、だれが何を信用したらいいのか、わからなくなってしまうでしょう。

さらに、いま、少しでも、「リスクを過度に恐れないように」ということを表現すると、「原発擁護派なのか」という「言葉狩り」が始まってしまいます。これまで、なぜさまざまな放射線に関する基準が、かなり細かく、かつ、安全基準を持って定められてきたかというと、まさしくその「放射線狩り」に対する過剰な反応に配慮するためであり、皮肉なことに、その配慮がまた、(私の個人的意見から見ると)過剰反応を呼んで、さらに騒ぎを大きくする、というような悪循環に陥っていると考えます。

チェルノブイリの放射線の影響について、さまざまなレポートが各地から出されています。、私が朝生で触れたものは、WHOから各種出されたレポートで、そのことを材料のひとつとして、お伝えしました。

WHO | Chernobyl: the true scale of the accident
WHO | Health effects of the Chernobyl accident

もちろん、限られた証拠だけをもってそれを安全の基準にすることはおかしいと考える人も多いでしょう。しかし、証拠がないものについて、すべてを疑心暗鬼になって追求しても、先に進めなくなってしまうことを懸念しています。

見えないリスクを追求し、過度に恐れるがあまり、そのことによって、風評被害や、必需品の欠乏、あるいは現地への流通障害や混乱を招いてしまうわけです。

不思議なもので、私たちは、人のリスクについてはまったく感受性がなくても、わずかにでも自分に降りかかってくるリスクについては、過度に、過度に、恐れるのです。そして、その虞から、バリューチェーンを壊したり、安全なものまで買わなくなってしまうのです。

下記に、参考になると考える情報源を挙げます。風評被害を防ぐためにも、なるべく、1次情報またはそれに近いものに一人一人がアクセスする、アクセスできる必要があるからです。

IAEA
Fukushima Nuclear Accident Update Log

放射線総合研究所
東北地方太平洋沖地震関連情報

日本医学放射線学会
社団法人日本医学放射線学会-会員の皆様へお知らせ

サイエンスメディアセンター
原発に関するQ&Aまとめ+ | サイエンス・メディア・センター

Cnet
原発事故:一番のリスクはパニック状態に陥ること–専門家コメント – CNET Japan

日経ビジネスオンライン
今の放射線は本当に危険レベルか、ズバリ解説しよう:日経ビジネスオンライン

JBpress
頼れるどころか、もはや「有害」な日本の震災報道 信頼に足る情報を探し求めて分かったこと

Journalist Wall of Shame(在日外国人による海外メディア誤報監視サイト)
JPquake – Journalist Wall of Shame

もちろん、これらが偏っていると思えば、ぜひ、独自のソースで情報源を探していただいて、合わせて判断をしてほしいと思います。

本当に必要なのは、これからおこりうるリスクを正しい計量することであり、かつ、「5.7メートル」という誤った津波の予測がなぜ起きたのかということを防止することであり、あるいは「ベント」がなぜ遅れたのかを検証することであり、必要以上にリスクを騒ぎ立てることではないと考えます。

そして、今後のエネルギー政策の中で

・完全に原子力発電を止めるのか
・原子力発電を今稼働しているものだけでも維持するのか
・原子力発電について、現在建設中のものは進めるのか

など、より先を見た具体的な議論をして、過剰な反応を抑えることが必要ではないでしょうか。混乱を助長したところで問題は解決しません。

データに過度に依存することは危険ですが、客観的な事実をもとにした議論が進むことを、心から、望みます。