拙ブログならびに本サイトにて、「CFW-Japan提案書」を発表してから、非常に多くの方から反響を頂きました。肯定的な意見が圧倒的に多かったのですが、他方で、CFWに対する理念上・実践上の課題や、構想内の矛盾など、議論の経過とともに様々な指摘を頂くことが増えてきました。当初よりこの構想が完璧なものとは考えておらず、このように多くの方の知恵を頂きましたことに心より感謝申し上げます。そしてそれは、私自身の考えを発展させる上で極めて重要なものばかりでした。

 そこで、現時点におけるCFWに対する私の思考の到達点を、これまで寄せられたいくつかの指摘や疑問を踏まえながら、以下に述べたいと思います。

 CFW構想の中には、明示こそしていませんが、二つの方向性が混在していました。これはそのまま、CFWを支持して下さる方々の志向にも重なってきます。それを私は「つなぐ」CFWと「みたす」CFWとそれぞれ表現したいと思います。

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?「つなぐ」CFW:労働市場の一時的な代替として

? はじめに申し上げたいのは、CFWに対して、災害によって機能しなくなった労働市場を一時的に代替する機能が期待されているということです。通常の経済活動が行えないために被災地には余剰労働力(すなわち、失業者)が発生します。そこで、復旧・復興事業によってこの労働力を吸収しようという考え方です。

 ご承知のとおり、復旧・復興需要は永続的に存在するわけではありません。そのため、CFWで雇用された方々はあくまでも従前の雇用や新しく安定的な職を得ることが期待され、それまでの一時的な「つなぎ」としてCFWに参加することになります。このため、CFWで支払われる賃金は市場相場よりも低く設定され、CFWへの依存が起こらないようにするなどの配慮が必要になります。

同様に、これは既存の労働市場を一時的に代替する措置ですから、それまでも労働市場へ参入できなかった高齢者や障害者などについては、CFWにおいても対象外です。こうした性質は、例えば途上国のCFWの実績を多数有するMercy CorpsのCFWマニュアルでも強調されています。

CFW構想に寄せられた懸念の多くは、このようなCFWの考え方に対するものだったと理解しています。CFWは既存の労働市場に参入できない方々を引き続き排除します。ただでさえ低賃金で働かざるを得ない労働者に対して、さらに低い賃金を提示し、労働力を搾取する仕組みだという指摘もありました。だからこそ、CFW構想では、労働が強要されてはならないこと、また様々な理由で労働できない人に支援が行き届かないことがあってはならないことを強調していたつもりです。あくまで、通常の被災者支援が行われた上でのプラスアルファの支援の仕組みだと理解すべきです。

おそらくCFWは、本質的に平時の労働市場に内在する問題までも解決してくれるツールではないのだと思います。もちろん、CFWでの雇用に際して職業訓練を施すなどによって、その後の再就職を容易にするといった方法は考えられますが、逆にそうした社会政策的な配慮がCFWには不可欠であるということでもあります。CFWの限界が明らかになってきたことはこの間の議論の大きな成果だと思っています。?

ところで、CFWはワークシェアリングであるという指摘がありました。確かに、復興需要を一定とすれば、従来は被災地の外部だけで吸収していた需要を被災地と分け合うと言うことですから、その意味ではワークシェアリングであるという指摘は的を得ています。

ですが、CFWを行うということと、復旧・復興をどの規模で行うかということは全く独立です。いわんや、CFWが復旧復興のための財政支出を抑制するための仕組みだというのも完全な誤解です。復旧復興の財政支出をどの程度行うかという判断は、被害状況や、財政状況、復興事業の中身、国民の選好などに従って決められるべきであり、CFWが支出額を決めるということはあり得ない話です。財源をどこに求めるかという話もCFWとは全く無縁の話です。

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?「みたす」CFW:労働市場のすきまを補完する手段として

? もう一つのCFWの捉え方は、通常の労働市場では評価されない労働に対し、CFWの手法を用いて雇用を創出しようという考え方です。

 例えば、提案の中にでは、がれきの撤去の際に遺留品を回収して持ち主に返すといった事業を対象に含めていました。がれきの撤去に従事するための労働需要は労働市場で発生します。しかし、こうした遺留品の回収については、国の災害対応メニューにもないため、労働需要が発生しません。そこで、そのような労働に従事する人々に対して、何らかの資金を提供することによって、市場に存在しなかった労働需要を発生させるのです。これを労働市場のすきまをみたすCFWと呼びたいと思います。

 「みたす」CFWの対象は、例えば避難所や仮設住宅における被災者のケアなどが挙げられるでしょう。避難所で献身的に他者の世話をする人々や炊き出しに従事する人、仮設住宅に移ってからも入居者の安否を気遣い訪問したり相談相手になったりなど、様々な支援ニーズが発生しますが、どれも一般的にはコミュニティの機能とされ、労働市場の対象ではありませんでした。しかし災害からの復興過程では、こうしたしごとの役割は極めて重要で、またかなり長い期間必要になってきます。こうしたコミュニティの被災者支援の仕事についても、そこに賃金を発生させることによって、より持続的な仕組みになる可能性があります。

 「みたす」CFWは、「つなぐ」CFWと異なり、必ずしも一時的な措置である必要はなく、劣等処遇を取る必要もありません。フォーマルな労働市場と競合しないため、経済活動の復興を阻害することもないからです。また、雇用の対象者から高齢者や障害者などを排除する理由は全くありません。むしろ平時の労働市場で就労機会を見つけられない人ほど、CFWを活用する余地は大きくなります。

 ところで、「みたす」CFWについては、だれが被災労働者の賃金を支払うかという問題が生じます。このため、CFW試案においては、義援金などによるCFWファンドを創設し、そこから賃金を支払うというアイディアを提示しました。これにより、義援金が単なる所得移転ではなく、被災者の労働による付加価値を生み、また労働者の所得にもなるという点で、義援金をより効果的に活用することができるからです。

?CFWの今後の方向性について

?私は、「つなぐ」CFWと「みたす」CFWのどちらも今回の災害に対処するためには必要だと考えています。ただし、「つなぐ」CFWについては、様々な働きかけの成果かどうかはわかりませんが、現在政府の緊急災害対策本部の下に「被災者等就労支援・雇用創出推進会議」が設立され、被災者雇用の枠組みが整いつつあります。まずはこれらの議論の行方を見守る必要があるでしょう。

 同時に「みたす」CFWについては、政府の動きを待たずに、民間で活用可能なCFWファンドを創設する必要があると考えています。長期的にはこちらの活動が中心になるのではないかと考えています。引き続き、皆様ご意見をお待ちしております。