(この文章は2011年4月10日に行われた対談の模様を編集したものです。元の対談はこちらをご覧ください。)

8. 原発事故の問題点は単純に「冷却」だけなのか

勝間:アトムちゃんウランちゃんの時代ですよねえ。

郷原:そうらしいですねえ。今から思うと考えられないんですけども、地域は原発に対して非常に歓迎的だったんですね。

勝間:スリーマイルでずいぶんひっくり返ったという話を聞いて。

郷原:あと「もんじゅ(高速増殖炉)」と。なんか絶対安全という神話が完全に生きてたんですね。疑う余地がまずなかった。

勝間:絶対安全という神話は、これもなんか私はリスク量で比べてしまってよく怒られるんですけども、ゼロだと思っていたリスクがちょっとでもあるから原発に対してみんなアレルギーを起こしてるって意味なんでしょうか。要するに、世の中のあらゆる事故のリスク、津波のリスクなんて典型なんですけどそういうものに比べた絶対的なリスク量の比較っていうのは。

郷原:結局ね、それは検察の正義神話と同じで絶対安全というのは客観的に存在しているのではなく、みんなの頭の中にふわふわと浮かんでるだけのものなんです。だから、なんとなくそれを維持するためには、こういったことはまずい、こういったことはないほうがいい、あるいはこういうことは教えないほうがいい、情報開示しないほうがいい、極端な話は本当に必要な対策を講じたらそれ以前は危険だったということになって絶対安全の神話が崩れるからやるなとか。そういう話ってのは全部客観的な絶対安全ではなくて、みんなの頭の中にある虚像としてのイリュージョンみたいなものなんですね。これが中心になって動いてきたから、こんな危険が内在した状態で原発が動かされてたんだと。
まあ私はね、そういうものが本当に安全を阻害してたんだなっていうことを、今回の福島原発の事故の後ずっと思ってきたんですよ。だから冷却機能ってことに関しても、想定外の津波による災害っていうのがあったから、そのあとの対応が混乱してしまって、人の対応が混乱したからクライスマネージメントが混乱してこういうことになっちゃったのであって、単なる物的な設備だけの問題じゃないんだろうと思ったんですね。想定してなかったから、という絶対安全による思考停止がこういう状態を招いたんだと思ったんですよ。ところがこのあいだの震度6強の余震で、東通原発と女川原発の非常用電源が落ちちゃったじゃないですか。

勝間:あれは余震がほぼ確実にくると分かっていて、点検はしてたんじゃないんですか?

郷原:衝撃ですよ。

勝間:あそこ私はまだ詳しく調べてないんですけども。実際どういうふうにご覧なってますかあのコンプライアンス上。

郷原:ひょっとするとさっきから言っている、後から直すと、当初の対策が甘かったと指摘されるという発想と同じだったのかもしれないです。ある程度の施設に対策が不十分なところがあったのに、まああまりそれが根本的に弱いってことを指摘するとかえってその当初の対策の問題が指摘されるという。

勝間:分かりました。女川原発のほうはちゃんと止まったし冷えてるんだからこれはこちらでもコンプリートな原発で、福島はたまたまだったという表現を使いますよね。

郷原:そうですね。ただあんな危険な要素は今回発生したわけじゃなくて、恐らく震災のまえからあったんでしょうねえ。どうなんでしょう、あの非常用電源が失われたのが、今回の地震でダメージが発生したところに更に余震でダメージが重なったから起きたのか。それとも元々問題があったのか。

勝間:それこそ発表すべきなんでしょうね。

郷原:そこは本当に至急原因を究明して、他の原発の安全が本当に確保されてるのかどうかということを確かめないといけないですね。

勝間:今回非常に私自身も考え込んでしまったのが、原発のようなそれこそ絶対安全のリスクを作ってしまわないと受け入れられないモノに対して、そのなんて言うんでしょうコンプライアンス的に法令遵守に走ってある意味その情報を隠匿する体質がある会社の組み合わせというのが。

郷原:結局、安全っていうことについて、もちろん絶対安全なんていうものはないし常に安全に向かって進んでいかないといけないんですよ。

勝間:はい。

9. コンプライアンスの基本は「失敗学」である

郷原:それで進むためには、安全と反対の要因を常にチェックして明らかにして、それがその広い意味での失敗ですよ、失敗に当たる要因というのを少なくしていかなきゃいけない。日々、安全に向けてバージョンアップしてかないといけないわけです。
ところがまったく反対の発想だったわけですね。安全に反することを認めない、失敗を認めない。だから失敗を活かせないし、全然成長していかなかった。

勝間:いわゆる、昔成功した社長が彼は成功したから社長になったのにも拘わらず、社長になったあとは全部成功だからその成功じゃない報告は聞かなくなるのと同じですよね。

郷原:そういうことなんです。だから、私のコンプライアンスの考え方は、元々畑村洋太郎先生の失敗学っていうのがベースになってるんです。

勝間:ああそうですね。

郷原:失敗から創造にと。その考え方とまったく同じで、過去の発生した問題コンプライアンス問題や不祥事問題についてきちんと不祥事を明らかにして原因究明していけば、そこから必ず組織を良くしようという材料が見つかるはず。

勝間:今回の例えばその絶対安全が爆発してしまったのはともかくとして、たとえそれに対する反論としてでもこの人たちは真摯にそれを受け止めて失敗じゃないほうに向かっているという心証を得られなかったのが問題ということですね

郷原:うん、まだ全然そういう方向に動いてないですよ。しかもまだその原発事故に対する対応がずっと続いてるじゃないですか。その続いている中でも、反省して失敗を活かしていかなきゃいけないのに、なんかそういうこと感じられます?

勝間:津波に関しては今回こういう基準でこう破られてしまったので、その東電や全国の残りの危機にしても何メートルと基準について再計算しますとかそういう発表が必要ですよね。

郷原:ええまあ。そういうすぐに大地震が起きるかどうかっていう大きなクライシスの対応よりも、今起きていることに対する対応が日々続いてるわけでしょう。震災以降これまでやってきたことの中で、数々の失敗を犯してるじゃないですか、すでに。それを走りながら失敗を明らかにして、原因を究明して、今後の対応に活かしていかないといけないと思うんですよ。ところが今までと同じような役人の無謬性みたいなもので考えているから、ぜんぜん活かされないんです、失敗が。

勝間:例えば東京電力を消防や米軍などが助けるよと言ったにも拘わらず、彼らは一回断っていると当事者は言っていますけども。これはどうやって読み解けばいいんでしょうか?

郷原:その辺の原因はよく分からないんですけど、ひとつ想像できるのは米軍との関係でいえば2つの要因があるんじゃないですかね。
1つは安全を最優先に考えるんだったら、早い段階で廃炉を決断せざるを得ない。しかし、東京電力の経理上たいへんなことになりますから、できるだけ廃炉を考えたくないという基本的なポリシーの違いが、最初の段階での支援を断ったっていうことかもしれないし、それからひょっとすると原発という施設の運用に関してはさっき私が言った4つの要素。

勝間:はい。

郷原:放射能の封じ込め、施設の保全、住民の安全と、情報提供と。この4つ以外にもうひとつ、国家的な軍事力での最終的な転用とかそういう軍事機密的な部分、やはり原発の施設内部において何か外国には見せたくないというような機密的な何かが頭の片隅にあって、だから外国には最初は触らせたくないというものが頭にあった、ということも可能性としてはありえますよね。

勝間:IAEAが常駐して年中見てるんでしょうけど。

郷原:軍でしょ?

勝間:ええ。

郷原:軍に対しては開示したくないという気持ちもあった可能性はありますよね。

勝間:東京消防庁はなんで追い返されちゃったんでしょうね。

郷原:うーん。

勝間:こっちのほうが消火のプロだと言って救助要請を申し込んだにも拘わらず、差し止めさせられUターンしてきて結局1週間後に行ったと。

郷原:結局それは、その問題の対応の中心になってる人たちの、どんな知識も活かして最も高いパフォーマンスで対応していこうという姿勢の問題じゃないですかね。やっぱり今回の事態っていうのが、原発の施設が運用上のトラブルを起こしたっていうレベルじゃないわけですよ。

勝間:そうですね。

郷原:建屋ふっとんじゃってるし、そこに水を入れなきゃいけないっていうのはもう何か建設工事の一部みたいな話ですよ、高いところに水を入れるっていうのは。それならいろんな民間の知恵があるわけですよ。モノを高いところに運ぶとか、そこに置くとか、水を回すとか。そういうあらゆる知恵を活用していく発想があったら、私はもっと早い段階でコンクリートポンプ車が出てきてもおかしくなかったと思うんですよ。ツイッター情報で官邸にその話をしたときに、何も知らなかったですからね、あのとき。

勝間:そのコンクリートポンプ車を提供して埋めるという情報が私のところに来たので、これをどなたかに繋いだほうがいいだろうと考え、郷原先生が一番通りやすいと思って、リツイートさせていただいたんですが。

郷原:ああそうかそうか。あのリツイートだったのか。

勝間:ええ。

郷原:ボクはすぐにたまたま総務大臣に報告する機会があったので、他の件で。その話をしたらびっくりしてましたよね。こんなものがあるのかと。で官邸の副長官と話して、それを作っているメーカーを大至急紹介してくれと。

勝間:うん。

10. 組織の外の知恵を生かす工夫

郷原:でも今から思えば、あの大型のコンクリートポンプ車を震災直後のとにかく水を送らなきゃいけない状況で活用してたら、ずいぶん違ってたんじゃないですかね。

勝間:そうだと思います。ですから何か失敗が起きたときに全力を挙げて他人の知恵も導入するっていう発想がないと。

郷原:その発想があれば、今回のような汚染された水が垂れ流されていて、それを何とかしようというというときにも、やっぱり民間のいろんな知恵を活かすことを考えないといけないじゃないですか。ところが最初にやったことが生コンですよ。割れ目に生コンを注入して、それでどうかなるって思います?

勝間:止まるわけないですよね。ちょっと考えれば構造上おかしいと思うのに。

郷原:笑ってるでしょう、その業界の人たちは。その次は今度はオムツの素材、高分子ポリマーのオガクズでしょ。これもやっぱりその筋の人たちから見たらちょっとおよそ考えられない。

勝間:逆に、汚染水専門業者さんみたいな方たちの知識をもっと取り入れるべきだったと。

郷原:と思いますね。

勝間:最初の消火活動を自衛隊がやったときにも、中々うまくいかなかった理由として、ボクたち高所からの消火活動の訓練をしたことがありませんってハッキリ言ったんですよ。

郷原:そうですねえ。普通に平時であれば、こういうものを使うときにこの条件が満たされていないといけない、というのを考えちゃうんですよ。
例えばコンクリートポンプ車の件も、私は何回も副長官と話したんですけど、最初これがネックになってると言ったんですね。これがネックになっているもののひとつは、瓦礫がたくさん下のほうにあって車が入らないって言うんですよ。それなら瓦礫をなんとかしてどかすしかないでしょ。そのために、最終的には戦車がどうのこうのって話があったけども、そのための知恵を出すしかないじゃないですか。だからあらゆる障害要因を排除して目的を実現していこう、そのためにあらゆる分野のあらゆる知見あらゆる知恵を活用していく姿勢というのが重要だと思うんですよ。そこで十分じゃない点があったのであれば、それは反省材料で、これからその失敗を活かさないといけないんだけども、それがうまくいってないんじゃないか。

勝間:やっぱりそれはキャパシティビルディングという形で、そもそも普段の平時から自力をつけてないかぎりは難しく、郷原さんはそういうとき向いてる人もいるといってましたけれど、問題解決の能力的なものにはネットワーキングとか情報収集能力がないと。災害時にこそ普段の実力以下になってしまいますから。

郷原:だからその平時とは違うことが起きてるだけに、必ず過去に起きたことと同じ想定でやれることじゃないんですよ。

勝間:はい。

郷原:緊急事態有事ってのは、そこで求められているのはなんなのかよく考えて、そのために必要な要素を取り入れていかないといけない。だから必要なのは想像だと思うんですね。ところが、法令遵守的な発想はそれとは反対の方向に働いちゃうんです。これをやるためにはこれとこれの要件が必要なので、ここのマイナスがあったらできない。これでこれをやったらできない。

勝間:そうですね。

郷原:こういう減点法的な発想になっちゃうんですね。

勝間:ああ、まさしく私は「はやぶさ(人工衛星)」の先生とお話したときに、加点法で作ったから行ってこれたという話をされたんですけど。

郷原:そうですね。

勝間:要するに世の中減点法ばっかりなんで、この加点法をいかに普及させるかというようなことをおっしゃったんですが。

郷原:同じことなんですよねえ。だからそういう発想でそういうような場で評価を得てきた人たちが、官庁とか大企業で出世してるわけです。その人たちが意思決定しているわけです。だからこういう事態になるとうまくいかないんです。

勝間:逆に自分の減点をなくす方向に全部動くと、思考停止になるわけですね。

郷原:だからこういう事態になったら、今までハグレ者だった人たちを重用しないとダメなんですよ。

勝間:でも減点法になる気持ちが私は少しだけこういうことなんだろうなと思うのは、例えば私は昔、原発関係のお仕事してましたので、もうとにかく原発という言葉を一言二言言うだけでおまえは原発擁護派だからとか、東電の何某だからとか、非難がはじまるわけなんですよ。

11. 原発は「絶対に安全」か

郷原:それは原発って問題をさっき言った絶対安全という神話で考えてきたので、その絶対安全を信じる人と信じない人とこの2つに二分されていたんです。この両者はまったく相容れることがないんですよ、完全に考え方が正反対だから。だからその対立構造が尾を引いている面もあるかもしれないですね。

勝間:私は絶対安全なんて信じてないんですよ。

郷原:でもそれが尾を引いている。原発を容認するって人はこの状態で容認するってことか、それともダメだってことか、二分法になっちゃうっていうひとつの傾向が、尾を引いているのかもしれない。

勝間:絶対安全に加担してたのに絶対安全の神話は崩れたんだから、それまで加担していた人間は罪であるという発想なんですよね

郷原:ううーん、まあそういう発想もあるかもしれませんね。だからそこで重要なことはそういう二分的な発想から抜け出ることですよ。

勝間:はい。

郷原:まずそれじゃ、安全とはなんなのか、原発の安全っていうのはどういうことが満たされていれば安全だと言って納得できるのか、もう一回白紙から考え直していかないといけない。白紙から考え直せば、さっきの止める冷やす閉じ込めるとか、その原発の安全要素の全体を改めて点検してみて、それが大丈夫なのかみんなが直接実感できないとダメですよね。

勝間:最近ショッキングだったのが、やはりずいぶんデータが出てきたんですけど1960年代の中国ロシアがばんばん核実験してた時代の特に中国から日本に降り注いだ放射線量というのはハンパな量じゃなくて、今の1万倍ぐらいあったと。

郷原:そうそう、そう言われてますよね。

勝間:それに対して当時中国から日本への要請で報道規制が敷かれていて、一部の学術論文やデータにはたくさん残ってるんですが、メディア的には一切言われてないわけなんですよ。

郷原:週刊誌には書かれてたんですよね。まあそういう意味で、瞬間風速的にどの程度の放射線の量かってことを言えばそれはそんなに心配ないレベルじゃないですか。ただ問題は、まだトラブルが発生し続けて収まってないものがある。そういうものがあることを前提にして。

勝間:うん。

郷原:それじゃ原発っていうのはどういう条件が満たされれば安心して安全だと思えるのか、ということのハードルはそりゃ相当高いですよ。私は元々絶対安全という神話を信じてたほうの人間です。

勝間:なるほど実際行かれて。

郷原:ええ。そっちの立場だったけど、今や完全に崩れ去りましたよね。だから今から、白紙からもう一回原発の安全というのを考えるとすると相当いろんな情報を洗いざらい開示してもらって、まったくの聖域なく開示してもらって、それでみんなが本当に納得できるような徹底的な説明をしてもらい、それで納得できたとき初めて原発を存続させるということが社会的に許容される。そういうことで言えば、今までの電力会社の感覚で言えばこれ絶対NOですよ。

勝間:少なくとも今の開示状態でいけば。

郷原:ええ、今までの電力会社の感覚から完全に抜け出さないと絶対無理だと思いますよ。

勝間:もし原発を含めた考え方として、そもそも電力市場に競争を入れなきゃいけないということに関してはどう思われますか?結局カリフォルニアみたいに停電するんじゃないかということにもなるんですけど。

郷原:電力会社の競争のさせ方っていうのは非常に難しいですね。単純なモノの需給関係とは違ってまず送電施設っていうのが固定化されてるし、その所有者っていうのも固定化されてる。その状況で、電力の供給側と需要者側とのあいだの契約をどれだけ自由度を持たせるのか。元々そこが技術的に難しい面もありますよね。
それと一番川上の発電という供給の問題。最終的な家庭への配電の問題と。そこのところの関係がどうなるべきなのか。それと発電というのは大規模な川上のものばかりじゃなくて小規模な風下のところにも作れるんですよね。自家発電だとか。

勝間:今かなり規制がはげしいですよね、自家発電に対して。

郷原:うん、そうなんです。そういうものが従来の電力会社の既得権益を守るために作られた面もあるし、しかし安定供給のためにそれなりの合理性をもって組み立てられていたと思われていた部分もあるんです。でもそれも一から考え直しですね。

勝間:難しいのは東電だけの問題じゃなくて、電力会社各社あるわけですから、各社そのものの戦略にも影響を与えるということですよね

郷原:そうですね。だから、電力会社の経営のあり方、組織のあり方、社員の働き方もう根本的に考え直さないといけないですよね。私は広島の松江の生まれで、父親も中国電力に勤めてたんで

勝間:ああそうなんですか。

郷原:幸い中国電力は原発の比率が低いんですよ。今も島根原発の1号機しか動いてないですから。上関の建設はこれで中止すると思いますし、今夏の電力供給に関しては原発が止まることによる供給不足の影響が比較的小さいんですね。だからといって会社としてこの災害をもちろん他人事と考えるわけにはいかないんで、会社自体あらゆるパワーを使って変えていかなきゃいけない。

勝間:中国電力は原発をなぜ小規模に留めておいたんですか

郷原:作らせてもらえなかったんですよ。上関の原発はもう何十年もまえから建設計画があったんだけど、反対運動がものすごく強くて。今年もかなりトラブルがありましたけれども、それによって結果的に原発の比率が低かったんですね。

勝間:コストをどう計算するかは別として、少なくとも原発は燃料費のウランだけみると石油や石炭と比べたら小さなコストで、しかも一回発電したら発電しっぱなしなので。

郷原:そこだけみるとね。しかし今回のようなことを考えると、その原発をひとつ作るためのお金の何倍何十倍って金額が掛かっちゃうかもしれないですね。

勝間:その説明であるとか事故の事後補償とか。

郷原:それから世の中に大変な迷惑をかけたわけじゃないですか。安全というものが阻害されることのコストをあらかじめアカウンティングとしてどう見積もっていくのかという、企業会計としてすごい難しい話ですよね。

勝間:実際に企業人が間違いがちなのは、安全という水準をエンジニアリングテクニカルな健康に被害が出ない程度のものを安全と呼ぶわけじゃないですか。ところが今回の発想は、そもそもゼロが安全なのであって、健康に被害がなかったとしてもわずかにリスクを負った部分についてはこれはもう話が違うじゃないかと。

郷原:それはそうですよね。多くの人が大変な不安を感じざるを得ない。それを前提にして電力供給を考えざるを得ない。場合によっては、まあ確定的ですけど施設を諦めざるを得ない。

勝間:この不安というものに対して、例えば電力会社や第三者でもいいんですが科学的な根拠で一生懸命説明している人がずいぶん多いんですが、説明すればするほど情報隠してるんじゃないかとか、あるいは今後今は出てなくても20年後、30年後、二世代後、三世代後には出るんじゃないかとか。

郷原:私はどちらかというと、絶対安全信奉、反原発の人たちが、まったく聞く耳を持たないし説明をまったく聞こうとしないから、本来であれば電力会社が情報出して説明すればいいものをそれができないために、今までのような不祥事のたびいっそう信頼が失われちゃうという、言ってみれば世の中が誤解していると思ってきたんですよ。この原発問題に関しては。電力会社側にも少し可哀想な面もあるなと思ってきたんです。
でも、今回の件でその意識はほとんどなくなりましたよね。少なくとも東京電力を見てたら。あれはやっぱり、本当に出さないといけない情報は全部出して説明しないといけないことは説明するという姿勢を持っていたらこんなことにはなってないし、そういうような姿勢を持っていないことが今までの不祥事でもやっぱり表れていただけだったんじゃないか、今はもうそう思わざるを得ないですよね。

勝間:ひとつその意見に根が深いと思うのは、だからといって東電側に聞いてみると本人たちはベストを尽くしていると口をそろえるわけなんですよ。

郷原:彼らが遵守的な発想、自分らの料簡で考えているから、要するに自分たちのテリトリー内では100点満点だと思っているんですよ。テストでは優等生的な答案が書けるかもしれないけども、世の中的に原発っていうものの安全を確保していくパフォーマンス的では0点かもしれないんです。

勝間:そこの部分の自分たちの基準と世間の基準に掛け違いがあるわけなんですよね

郷原:そうそう。そこが何が大事なのかまったく分からないまま対応してるから、こういうことになっちゃうんです。

Vol.4へ続く