日本の将来を考える時に我々が気付かずにある方向に向かっているとすると、気付いた時には遅すぎると言うことがあるので皆さんに注意を喚起したいと思い筆を取りました。

「職業には貴賎がない。」と言うことを考えると、言いにくいことを書かなければなりません。確かに平和な国内ではそういう風に言っておいて良いでしょうが、国際競争を考えると、そうもいきません。よく似た条件の2国、AとBが有ったとしましょう。A国は高学歴社会で人口の多くが大学院修了生(文科省用語では大学院は修了するが卒業しない。卒業は大学の学部まで)、一方B国は大部分の国民は最終学歴が義務教育であったとしましょう。どちらの国民が幸福かどうかの議論はとっておき、客観的な話をしましょう。この両者が国際競争をし、どちらが有利かと言えばA国でしょう。

日本は今、2重の人口問題を抱えています。一つは人口減少の問題、もう一つはOECD国中で比較したときの低学歴化の問題です。一見、独立した問題のようですが、この両者は繋がっています。

厚生労働省統計情報部『人口動態統計』によると、日本の女性の平均初婚年齢は1950年で23.0歳(男性は25.9歳)、2000年で27.0歳(男性は28.8歳)、2008年では28.5歳(男性は30.2歳)になり、どんどん晩婚化しています。日本の社会には健全な思想が幾つかあるが、その一つに「社会人にならない者が一人前に家庭を持つべきではない。」と言う考えです。中学を卒業して、若い時から社会の為に働いている者が家庭を持つのは社会にとってもいいことではあります。しかし、考えておかなければいけない社会現象があります。それは、国内問題としての高学歴化の問題であります。大学院修了までを考えると30歳近くになってやっと社会人になるケースが多くなっています。これは、いろんな社会的理由があるでしょうが、国内問題としての高学歴化というのは晩婚化の一つの理由になっているでしょう。大学院生たちは日本の社会では、やはり「学生の身分で結婚してはいけない。」と言われているのが現状です。

私は大学院をアメリカの大学で過ごしました。私がアメリカに行った頃、私費留学はなく、何処からか奨学金をもらわないと留学できませんでした。アメリカの政策であろうか、あるいは偶然か、アメリカでは大学院生は(私が行った大学だけではなく、アメリカの一般的な大学で)寮に入ろうと思えば家族寮か独身者用の選択があり、ほんの少しの料金の差で広く大きな家族寮に入ることが出来るシステムになっていました。友人の多くは家族寮に入るために、無理に結婚している者もいました。大学院生は奨学金で社会人のように扱ってくれ、又、家族寮にも住めました。大学院生の家族寮には保育園もあるし、どんどん子供が生まれていました。あたかも社会が大学院に行っている人たちの子孫を増やしてほしいと言っているようにも感じられました。

日本の外交の根本を築いた朝河貫一は「日本の対外方針」の中で「個人の間には忠告あり、扶助あれども、国家の道は自ら諫め、自ら助くるの外あらず。」と言っています。国家間の競争を考えたときに日本はあまりにも学歴を個人の受益者負担と考え全体の戦略がありません。 一国の人口構成を考えると、中卒の人ばかりではなく、大学院に行っている人の子供も増やしたいはずですが、この点に関して日本は全く戦略がありません。いったい将来の日本の人口構成をどう考えているのでしょうか。日本中を急に変えるのは難しいでしょうが、今回、東日本大震災にあった、大学には院生としての給料(奨学金)と家族寮を与えてはいかがでしょうか。大学院生には奨学金を出し、社会人として扱い、家族用の寮を充実させ、日本の人口構成に大学院まで勉強をした人の子孫を増やすべきではないでしょうか。こういう戦略は今すぐに実行に移さないと遅くなってからでは間に合わなくなります。