田中秀臣(以下、田中):明けましておめでとうございます。今年もReal Japanをよろしくお願いいたします。

上念司(以下、上念):明けましておめでとうございます。

田中:ところで野田首相の何が何でも消費税増税という姿勢をみせつけられ、暗澹とした気分の年末でしたね。日本の危機的な状況は少しも変わらず、いったいこの民主党中心の政権とは何なのか、日々憤りを覚えてます。

上念:年末に震災特集をテレビなどでやっていましたが、あれはよくないですね。震災の影響で仕事ができない人や、網が流されてしまい漁ができない人や、福島の困窮は相変わらずです。

田中:野菜や海産物などで風評被害も深刻ですね。

上念:こんなことをいうとまた御用一般人(定義:頼まれてもないのに政府や日本銀行の政策を合理的な理由もなくネットで喧伝し、政府や日本銀行の政策を批判する人たちを誹謗中傷する方々)がうるさいでしょうけど、一部の人が風評被害を広めているのが気になりますね。反原発もけっこうですが、福島で実際に暮らしている人に余りにも配慮がなさすぎるのはいかがなものかと。 
田中:そういう姿勢を赤木智弘さんなんかは日々、twitterなどで批判しているよね。

上念:この問題については某御用評論家(有名ブロガー?)も正しかったりします(笑)。

田中:ふーん(笑)。

上念:相変わらず金融政策への理解は私からみると問題ありまくりですが。

田中:ある御用批評家がいて、ハイエクを使った啓蒙をしているんですが、その人物は「漸進主義」的な改革がどうも嫌いのようです。僕は漸進主義、つまり少しずつ改革する立場ですが、そういう立場を批判する。ところがハイエク自身は漸進主義で、その対極のビックバン的な改革を「設計主義的」として批判するんですよね。いったいその御用評論家はなにをハイエクから学んでるんでしょうかね。それに日本銀行も広義の政府の一部なのに、その恣意的な金融政策のあり方を批判しないで、他方で恣意性を排除するようなインフレ目標政策は断固反対するw。

上念:ハイエクもだしにされて涙しているでしょうね。そんな御用評論家や御用一般人は多いですね。

田中:ところでまもなく私たちが昨年の春に出した『震災恐慌!』が新書になってまた書店に並びます(『「復興増税」亡国論』(宝島新書))。この『震災恐慌!』ですが、年末に朝日新聞で山形浩生さんが、「今年の三冊」で選んでいただけました。その選評を読むと喜ぶよりもやはり厳しい顔になってしまいました。山形さんが僕らの本を選んだのは。当時震災本がいっぱいでた中で、いち早く今日の悲惨な経済情勢を予見したこと、その悲惨な予見の中味は増税路線と金融引き締めである、と。僕らの予見がいまあたっているということは、あの本の「最悪シナリオ」があたっていることでもあります。つまり政府も日本銀行も事実上なにもしない。

上念:しょぼい増税路線と何もしない現状維持の金融政策ですね。

田中:白川方明日本銀行総裁は、ことあるごとに、日本銀行は世界でもっとも金融緩和しているとして、GDPとマネタリーベースの比率を示しています。でも、この指標でみると、高橋洋一さんが指摘してたけど、日本は70年代からずっと他の国より金融緩和です(爆笑)。

上念:つまりそんな理由で自分を弁護している日本銀行は無能ということですね(笑)。

田中:日本銀行は自分の立場のディフェンスばかりにいま神経を集中しているだけですからね。

上念:彼らは日本銀行法改正を阻止するのが至上命題ですから。

田中:何もしない日本銀行というスタンスの中に、「悪意ある不作為」が含まれてますね。

上念:「日本経済復活の会」がやっているチャンネルAJERの年末特集(【年末特番】亡国は日銀の使命!?上念司・倉山満 AJER2011.12.30 )に出て、倉山満先生と対談してきました。そこで話題にしたのが、日本銀行は誰のものか、ということです。私は外国のものじゃないかと(笑)、日本を滅ぼしたい海の向こうの勢力にとって、2010年はは最高の1年だったといっておきました。

田中:政策スタンスで海外のことをどのくらい気にしているか。これは陰謀論でもなんでもなく、単純な政策スタンスの話として読み解くことが可能です。例えば、金融政策を緩和気味にするか引き締め気味にするか、その判断基準として円とドルとの為替レートを重視するということは実証されてもいます。対ドルレートを意識して政策をしているということは。人民元とドルはいま事実上のペッグ(簡単にいうと同じ方向に同率動く)なので、実質上、日本の金融政策のスタンスの中に人民元の動向が織り込まれている可能性も大きい。海外の顔をみていることは疑いないわけです。日本は国際間の資本移動が自由で、変動為替相場制をとっているので、自分の国の金融政策は自国の経済状況だけを中心に判断できる自律性をもっているんですが、どうも日本銀行はアメリカや事実上中国などの為替レートの顔色をうかがっているのが実情ですね。つまり金融主権を自ら喪失してます。

上念:安達誠司さんの『円の足枷』(東洋経済新報社)によると、1ドル120円から80円台のレンジでみて金融政策を行っている。いまは円高の上限を上回っているので金融緩和をしょぼくやっているということでしょうか?

田中:そうかもしれないですね。ただいまの状況だと、海外が超金融緩和の姿勢なのでしょぼい緩和はほとんど効果が消失するでしょうね。で、また言い訳を重ねてずるずると後退。

上念:そうすると、日銀が何も理由として、①バカ、②言い訳、③海外のスパイ、という私がよく使う仮説でいうと②ですね。

田中:海外のスパイとはいわないけど、さっきの意味で海外の顔色をうかがっているのは事実ですね。自国民の生活ではなく違うもので判断している。

上念:ということは御用一般人も結果的に海外の顔色をうかがっていることになりますね。で、彼らは公務員を叩いたり、産業政策マンセーみたいな社会主義的なこといったりしても、基本的に外国の顔色をうかがっているのかもしれません。愛国者のふりをして外国の顔色をうかがうどころか、外国のために働いていた人が1930年代にいっぱいいたけど基本的には代わりません。

田中:御用一般人は知識を体系的に整理できない人たち、教養もなく、とりたてて学習しようというインセンティブにも欠けてるので、ただ単に炎上ネタをさがすだけの人たちですよね。その炎上ネタの代表的なものがナショナリズム的なもの。だからチャンネル桜にでるだけではてブに誹謗中傷を書き込む(笑)。

上念:それは知識人でもそうですね。この間、ある評論家と飲んでて、「私は真の意味で保守主義者です」と言ったら、「上念さんは国粋主義者なんですか」みたいなことをいわれました。僕にとって保守主義とは設計主義に反対する自由主義のことを指します。保守というのは理性に対して懐疑的で、漸進的かつ段階的に改革していこうという人でもあります。人間の理性に全幅の信頼をおかない、誰かが設計したことにダーっと殺到しない。毛沢東もスターリンも信じない。反証可能性があるにもかかわらずそれでも否定できないことを、あくまで現時点で正しいと考えるのが真の保守主義です。そういう意味では、真の保守主義の最大の敵は例えば「戦中の日本が全部正しい」みたいな復古主義や現状維持バイアスの権化のような守旧派であり、スターリンや毛沢東が推進した社会主義です。これを説明したらその評論家もそういう意味では自分も保守だと理解してくれました。

田中:そういう風に理解しないで、チャンネル桜に出ただけで国粋主義だの右翼だのというバカな断罪をする連中(たぶん今回の記事の下に表示されるはてブやTwitterで批判してくるので一々労力省けますがw)がネットの匿名に多い。

上念:例えば、連合は正社員の権利だけを守って、アルバイトや非正規の権利は守らない。セーフティネットから漏れ出た人を守るために、東京管理職ユニオンはすごく頑張っている。困っている人を助けようとしている左翼の人だっていっぱいいて、イデオロギー対立の前に本当に困っている人のために頑張っている組織をちゃんとみるべきですね。御用一般人は単にレッテル主義、ランク主義なんですよね。

田中:そうそう。あと精神的に病的に近いレベルだと、「田中や高橋洋一や若田部昌澄は論文書け」とか「学会で報告しろ」とか意味不明なことをいう。誰でも知っているような経済学の知見をわざわざ論文にするわけもないし、さらにそれぞれの専門で学会報告もやっているのにいつまでもそんな事実にも気が付かずず~っとTwitterで病的につぶやく。それをみている少数の無知な御用一般人も喜ぶ。まさに狂人の王国、気味が悪い(笑)。

上念:反論になってないんですよね、彼らのは。彼らは実社会では全く相手にされていないので、ネット上で会話を求めているんです。ふつうに話していても誰も相手してくれないので悪態ついて「ゴルァ!」と言い返されることでしかコミュニケーションできない。そういうかわいそうな人たちです。むしろ、彼らはデフレの犠牲者の可能性もあります。デフレで仕事がなくなって一日中パソコンにはりついている。私だって一日中はりついてないw。例えばtwitterのdefleタグや2ちゃんねるの経済関係なんてまともな人は誰も熱心にみてない(笑)。正直影響力ゼロでしょう。

田中:確かに、僕もTwitterなんて自分のリスト(だいたいは国際的な経済情報のソース)ぐらいしかみてない。

上念:最近はFacebookやっているのでtwitterでの発信もあまりしなくなりました。御用一般人は、みんな寂しいから過激な罵声を浴びせてみんなに振り向いてもらおうと必死なだけです。彼らはとにかく人に構ってもらいたい、そうすることで心の安定をもとめているだけなんですね。ちゃんと仕事がみつかればやめるのではないでしょうか?

田中:僕たちはそういうさびしんぼうをかまっている(笑)。つきあいがめっちゃいいねw。とはいえ、最近忙しし、ほとんど僕たちはかまわないじゃない。

上念:かまわないので最近は彼らは別なかまってくれる相手をさがしているのかも。あるいは本当におかしくなっているのか、あるいは歳末に臨時のアルバイトが入って忙しいだけなのかもしれませんが、最近は少し大人しいですね。あるネットのデフレ派御用一般人がいて、震災の後に長く音信不通になっていることがありました。どうしたのかな、何かあったのかな、と心配しましたが、そのデフレ派は何もなかったように復活しました。で、私が「みんな心配したんだぞ」と書いても、いっさいコミュニケーションをとらずに平常業務の誹謗中傷を繰り返すのみ。まともな交流ができないですね。

田中:どうということないコミュニケーションが不得手、しかもその事実を直視できないので病的な執拗さだけ残る。前も書いたけど、頭のおかしいブログがいて、いまも自分の発言だけを無限参照して、延々とリフレ批判をして常時発狂状態を続けている人もいます。精神カウンセリングの問題でしょうね。

上念:意見の対立ではなく、さびしいからかまってくれ、その方便としての罵倒と同じ主張の繰り返しだから本当に病的な精神状態だと思います。必要なのは治療でしょうね。僕らは医者ではないので対応できません。

田中:彼らの多くは実は自覚症状があるのかもね。前回もそうだけど今回も名指しをしなくても、こっちが想定している人物が、この記事の下にまたもや誹謗中傷をTwitterでつぶやいたり、はてブを残す。まあ、要するに大した意見もいえないので、かまって君と同じ(笑)。そういう御用一般人と違い、最近では意見の対立を感じたのは、チャンネル桜での増田悦佐さん。増田さんはコミュニケーション可能だったよね。

上念:増田さんは、弱者への共感がまったくなかったですね。

田中:僕もそう思う。高尚な文明論で問題を語りすぎているし。

上念:高尚な文明論で語る人は1930年代にもいました。そういう連中はは基本的にソ連の命令で動いてました。

田中:尾崎秀実の中国論は高尚な文明論の代表だよね。具体性がまったくない。文明論であって分析論ではないから問題がなんであるかよくわからないし、当然に対処法もわからない。読み手は漠然と大変だなあ、とか、どうにかしないと、とか煽られるだけ。あと素朴な意見として、前から思っていたのは、なぜソ連の要請で言論活動をしていた人物を、ほぼ手放しに戦争の犠牲者みたいに美化して、無条件にあたかも平和の希求者とする評価があるのかわからない。彼がやったことは32年コミンテルンテーゼに基づくような講座派の連中やそれに好意的だった戦前の岩波文化の伝統の中で、なにか尾崎への偶像化がすすめられていて、これは素朴に変だと前から思ってた。

上念:当時は日本特殊論は、32年テーゼの影響下にありましたよね。

田中:尾崎への好意的評価もそこからスピンオフしたもの。

上念:「自分の頭で考えよう」とか言っている学歴も職歴も立派な人が、「1910年からずっと日本は軍国主義だった」などと平気で言ってます。たぶん教科書に書いてあることを無条件に信じて自分の頭で考えられないのかもしれません。尾崎もそういう意味でナイーブな学歴エリート、言ってみればヘタレ文系の走りみたいなものだったと思います。

田中:でもその軍国主義観は教科書的というよりもただの妄想レベルかもw。尾崎は情報の混乱に意図的に加担したのは疑いのない事実でしょうね。 ロベルタ・ウールステッターの『パールハーバー』(読売新聞社)という本が、なぜ日米は開戦したかというと、お互いに情報が過剰にありその処理に失敗したからだ、という意見を書いてます。陰謀論のレベルではなく、情報の混乱に意図的に寄与したのが尾崎たちゾルゲの一派だったし、そんなことやってる人は、外国のスパイであろうがなかろうがいっぱいいましたよね。いまでの日本銀行は、10年前からダム論であるとか、中国発デフレだとか、さっきの白川総裁のようにGDPとマネタリーベースの比率で日本は緩和しているだ、などと、間違った情報を意図的に流している。それは情報の混乱という形で、社会的不安を助長させて、その下流に位置する御用一般人の気持ちをますます不安定化させていく。で、なぜか僕らがそのしりぬぐい(笑)。

上念:自分の頭で考えられない人は、要するに情報を自分で処理しきれません。だから、彼らは権威に安易に頼るようになるんでしょうね。基本的には、①頭のいい人がいっている、②えらい人がいっている、③みんなが言っている、というのに弱いんです。

田中:情報が混乱すると、情報の流れの下流にいる御用一般人がますます増えていく。

上念:それどころか、最近は御用一般人にもバリエーションが増えて、私が「変態御用一般人」と命名した変種も増えてます。

田中:変態?(笑)。いまでも十分かれらは変態ですがw、変態御用一般人とはなんでしょうか?

上念:政治家や裁判官、上級官僚などを完全に擁護するのが御用一般人です。対して、変態御用一般人は、公務員叩きをして日本銀行は完全に無批判とか、財務省だけを持ち上げてあとは全否定とか、そういう歪んだ心性を持ってます。お上=政府、全体と一体化するのではなく、その中のごく一部である日銀や財務省と一体化する点が「変態」の特徴です。戦争に負けた日本において「海軍は負けてない」とかアホなこと言ってる自称「愛国者」がいますが、そういった類ではないでしょうか?

田中:恣意的な政策スタンスを政府や政府の一部に対しては批判するのに、他方では日本銀行がいくら恣意的な政策をしてても批判しないで、「うまくやっている」とかいう(笑)、そういうのが変態御用一般人ですか。

上念:そうです。あとこれは経営者に多いのですが、外国との競争にさらされていると、外国のライバルカンパニーはその国から補助金をもらっている。私たちもそうしてくれ、と政府の「産業政策」を期待するとか。中国のコンピューター企業などがそんなケースですが、本当に政府が補助を与えてそれでましになるんですかと(笑)。

田中:「産業政策」は政府の恣意的な政策の代名詞だよね。日本の歴史では、ほぼ衰退産業の保護でしかないけど。

上念:計画経済ですらないですよね。典型的な例でいえば、日本の農業政策という産業政策は、農業そのものの衰退を助長してます。産業政策を擁護する人は少数の成功事例を持ち出して弁護する。この論法は、日銀や財務省や産業政策を擁護する変態御用一般人の特徴でもありますね。最近は変態御用一般人が増えているんですが、これはデフレの継続で、精神的に不安が高まっているせいでしょう。彼らは分断されて孤独に生きているのでいつも不安です。だから、「大きな物語」にすがりつく。宗教やイデオロギーにすがりつくひともいるかもしれないが。政府や日銀にすがりついて、心の安定を見出す。ナチスが生まれた精神構造はこんなんじゃないでしょうか。国家の物語への熱狂。たとえば不安をリアルで解消するすべがない人がネットにあつまり、大きなものにすがり御用一般人になる。しかし、御用一般人どうしはネット上でも分断されていて、彼らの横のつながりはほとんど観測されない。彼らがオフ会をひらいたのをみたことない。

田中:オフ会なんかできない。はてブとかでせいぜい群れるだけで、それも中味のある結び付きではなく、炎上させて暖をとってるアホレベルw。まあ、或る意味、孤独な人達ではありますね。

上念:分断されていてアイデンティティクライシスに直面していて、ネットで相手をdisってそれをみんなにみてもらって、「オレはつながっているんだ」と。病気ですね(笑)。

田中:教養もないね。ネットで初対面でゲロはきかけているような人は本当に多い。

上念:みんな一発屋、当たり屋の類ですよね。ゲロはきかけておわりで対話にならない。しかも、リアルに他人とはかかわってないので、複数アカウントを自作自演してdisってる可能性もある。

田中:あるある(笑)。この間、リツイートされてきた中にあったんだけど、僕がブロックしている人物がつぶやいてて、「おれがもうひとつもっているアカウントまでブロックしているのは田中だけだ」みたいなのがあった 笑。

上念:へー、本当にそれは病的ですね。

田中:しかも別なアカウントをブロックしているということは、たぶん同じような内容の誹謗中傷をするために作ったから、両方とも僕にブロックされたんでしょうね(笑)。人を誹謗中傷するために自作自演の「波状攻撃」用でしょう。まあ、昔からよくある手ですよね。すごい労力かけてますね。寂しさの解消にはかなり手間もかかるんでしょうね(笑)。

上念:私は、彼らにアルバイトでもいいから定職に就くようにオススメしたいです。何なら、実家に戻って家業をつげよと(笑)。

田中:あとどうも変態もふつうの御用一般人も、年齢が高そうですよね。30代後半から50代前半ぽい。それに女性はほとんどいない。ほぼ男性みたい。

上念:女性はコミュニケーションを重視する性向があるようです。例えば女性は職場を失ってそこを基点とした人間関係を喪失しても、他の場所でコミュニケ―ションをとる場があるのでバランスが取れる。でも男性は職場のコミュニケーションの喪失が致命的になってしまうようです。

田中:職場で立場なくなると、これは深刻な話として、鬱になったり、あるいは不幸にも自死に至る人もでてくるでしょう。もしこのような過程で、御用一般人がアイデンティティクライシスに直面しているならばそれはそれで深刻な問題です。ただその精神的な危機の治癒そのものは僕らじゃできない。僕らができるのは経済の問題点を語るだけです。

上念:森永卓郎先生のすすめで、ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』を読みました。内容はスティグリッツを過激にしたような本です。この中に拷問の実験というものがあります。人格を書きかえるために一回脳内を真っ白にリセットする必要があるということで、感覚遮断するくだりがあります。目隠しし、耳は大音量のヘッドホンをつけて、体は段ボールで覆う。そして時間の感覚を麻痺させるために食事の間隔も二時間おきだったり、もっと長くして一日二回だけとかにしてしまう。さらに、電気ショックで一時的な記憶喪失状態に陥れる。この本を読んでて、デフレも一種のショックドクトリンじゃないかと思いました。男にとって大切な職場を喪失させ、再就職しようとしても簡単にはさせず、さんざんな目にあわせる。文句を言いたくても、マスコミは「日銀はすばらしい」「増税で財政再建する」とかウソを1万回繰り返す。デフレによる失業などで心がまっさらにリセットされた人は、ウソ情報に対する抵抗力を失ってしまいます。だから、マスコミから流れる情報を鵜呑みにしてしまう。つまり、御用一般人を増やすメカニズムとはそういうことなのではないでしょうか。いわば「デフレ・ショックドクトリン」。この手の洗脳はいっぱいあります。例えば、NHKの朝ドラの『カーネーション』で、社会主義者が反戦のビラを配って特高につかまるシーンがありました。私はそれを批判して、「社会主義者が反戦運動家のような刷りこみをしている」と書いたら、さっそく刷りこみされてる人から、「小林多喜二を参照ください」と反論がありました。

田中:社会主義者が反戦運動家と同値なんてとんでもないデマです。また小林多喜二は共産党活動というイデオロギーのために死んだのであって、反戦活動で逮捕され死んだのではない。

上念:まったくそうです。で、デフレ・ショックドクトリンに話を戻すと、デフレで職場を失わせ、心を不安定になった人を増加させ、政府や日本銀行という権威にすがりつくような御用一般人を生産していく。デフレが御用一般人を生産するトリガーになっています。

田中:そこで話を尾崎秀実みたいな情報の混乱に意図的に寄与する人たちの存在の問題性もでてくるわけですね。そういう人たちは今後も批判していくつもりだけども、デフレ・ショックドクトリンの解消自体には、デフレ脱却が最優先ですね。こころの病気そのものの治療は僕らはできないのでその点はご遠慮願いとして、ただデフレ・ショックドクトリンみたいなものがなくなるように、今年こそデフレを完全に根治していきたいですね。

田中秀臣&上念司著『「復興増税」亡国論』(宝島新書)