ギリシャから始まった債務危機は、全ヨーロッパを席巻し、2年を超えて続いている。

欧州経済の縮小によって、絶好調だった中国経済にも翳りが見え始め、世界全体の経済に大きな影響を与えている。そんな中、本日(2012/9/7)、欧州中央銀行が「国債買い入れを無制限とする」ことを理事会で決定した。これを巡る報道が世界中で一斉に配信されている。

 

外資系では、まずロイターが何本もの詳細な報道を行った。

■ECBが期間3年までの国債買い入れで合意、量的限度設定せず

http://jp.reuters.com/article/jpeconomy/idJPTJE88500520120906?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

■新たなECB国債買い入れプログラムの詳細に関する声明

http://jp.reuters.com/article/jp_eurocrisis/idJPTYE88506L20120906

■ECB、期間3年までの国債買い入れで合意:識者こうみる

http://jp.reuters.com/article/jp_eurocrisis/idJPTJE88500S20120906

など、数多く報道している。

 

さらに、フランス系AFP通信は「ビッグ・バズーカ」と称して大きな期待を寄せた。

■欧州中銀、債務危機国の国債買い入れへ 1~3年債を無制限に

http://www.afpbb.com/article/economy/2899470/9472968?ctm_campaign=txt_topics

欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で、債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債を無制限に買い入れる計画を承認した。ドイツの反対を押し切って、債務危機に対処するためのいわゆる「ビッグ・バズーカ」の発射に踏み切る。

概して、欧米の報道は今回の処置に前向きの評価を与えており、その結果、株価も上昇し、経済混乱は一服ついたといえるだろう。「禁じ手」とか「切り札」とかの言葉が踊るが、中央銀行が本来どういう役割を果たせるのかを示して見せた好例であるといえる。

 

では、日本の報道はどうなのだろうか。

■欧州中央銀行:国債購入 一時しのぎの色合い強く(毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/news/20120907k0000m020100000c.html

■南欧国債購入を表明 欧州中央銀、1~3年債を無制限で (朝日新聞)

http://www.asahi.com/business/update/0906/TKY201209060594.html

ECBが金額に制限を設けず購入することで、スペインなどでは財政規律が緩む可能性がある。このため、ECBは、対象国がユーロ圏の救済基金と構造改革を約束することを求め、進捗(しんちょく)状況の調査に国際通貨基金(IMF)を関与させる考えも示した。財政再建の姿勢が緩めば、買い入れをやめる方針だ。

 

と、ずいぶん後ろ向きの評価をあたえ、リスクに対して厳しいまなざしを持っている。まず、世界各国がこの対応を、どのように評価し、日本のメディアや市場関係者どう考えるのか。これは極めて重要な問題である。つまり、中央銀行の役割とは何か、政府と中央銀行が一体となって、経済全体にどのような政策割り当てを行い、マクロ経済運営を行うのか、という事をそれぞれセクターがどこまで理解できているのか、という問題であるからだ。

 

上で紹介した記事、

■ECB、期間3年までの国債買い入れで合意:識者こうみる

http://jp.reuters.com/article/jp_eurocrisis/idJPTJE88500S20120906

においては、日本人エコノミストの一人は、下記のようなよく意味の分からないコメントを述べている。

ECBは、これまでも2010年から今年の春先までで2000億ユーロの国債を購入している。さらに、LTROで金融機関に出した資金のうち、1兆ユーロくらいが国債購入に回っていると思われる。間接的に持っている分を含めれば1.2兆ユーロくらいで、ECBのバランスシートの4割くらいは国債のリスクを負っているということになる。値下がりリスクのあるものをすでに4割持っていて、さらにこれを上積みしてゆくのはどうなのか。
<某金融機関 チーフアナリスト>

 

国債は満期まで持っていれば、国家が破産しない限り、リスクフリーであり満額で完済される。さらに不思議なのは「間接的に持っている分」の理解である。金融機関が持っている国債(債権)は、一次的には当該金融機関が損失リスクを抱えている。もし、仮にディフォルトすることがあった場合もリスクは、その金融機関の出資者・預金者が負担する。その金融機関のある国の政府が、預金に保証をつけていれば、二次的なリスク負担者は政府(国民)となるだろう。つまり、金融機関が保有する国債のディフォルトリスクは、ECBにはほとんど存在しない。むしろ、今回の処置で一番のリスクは無制限に購入することによるマネー量の増加によるユーロ安とインフレの問題であろう。

 

こういった、金融システムの本質が分からない人が日本には、極めて多い。さらにこういった人が国債の問題に論評することで、中央銀行の金融政策の役割について混乱に拍車をかけることとなる。

 

このECBの決定と対照的な事態が日本で起きている。

特例公債法案の廃案とそれに基づく、予算執行の抑制である。

■戦後初の予算執行抑制へ 3カ月で5兆円、生活に影響も(朝日新聞)

http://www.asahi.com/politics/update/0907/TKY201209070164.html

 

これをメデイアや国民はどうとらえているのだろうか。政府と自治体に支払われる地方交付税の関係を述べると、親会社と子会社と言えるかもしれない。親会社の資金繰りに窮したから、子会社への資金移動を行わない、と宣言したのである。

 

これは日本政府が、ディフォルトしたということではないのだろうか?

ECBの今回の決定は、このような事態に陥ったら、地方政府や大学にしわ寄せするのでなく、中央銀行が無制限に短期国債(個人的には長期国債で良いと思うが)を買い取ればよい、と教えてくれている。これが世界の常識なのだと。

 

日本経済が長期的低迷に陥って20年を超えようとしている。経済成長がほとんどできない真の理由がどこにあるのか、もう一度真剣に考えるべき時期が来ていると思う。