いつもの『電気と工事』で隔月で連載中のアイドルネタです 笑)

前田敦子からデンコちゃんの経済学へ

 だんだんこの連載が、アイドルの経済学と化してきたw。ももいろクローバーZの経済学を扱ったときに、ネットではかなり評判になり、書き手としてちょっと驚いたことがあった。さすがアイドルおたく、どこまでも独特の情報収集力があるなあ、と感心したのである。

 前田敦子がAKB48をやめることでアイドルグループからの「卒業」が話題になった。ところで会社員にも「卒業」はある。もちろん定年退職がその典型だが、それだけではないだろう。出向や転籍なども「卒業」の一種だし、もちろん解雇や途中退職なども「卒業」だ。それと公務員などは、「天下り」も多いだろう。

 前田敦子がどこかに「天下り」することはないが、公務員やまた独占的な大企業では、「天下り」がみられることが多い。中央政府の官僚だけではなく、地方の公務員でも天下りは多いが、民間企業の天下りとはなんだろうか? 

 例えば東京電力を考えよう。東京電力は戦時中に、戦時体制に備えて政府がコントロールしやすいという名目で地域ごとにいくつかの独占事業体を構築する中で生まれた。独占事業体の特徴というのは、簡単にいうと消費者にとってムダが発生しやすいことだ。例えば電気料金は、自由競争のケースに比べて、割高でになる。なのでいろんな仕組みで、政府は独占的な電力会社の電気料金を制御していくことになる。ただしどうしても完全に行われることが難しい。

 そこで独占事業体の多くにはムダがわりと広範に観察できる。わが東京電力もその例のひとつのようである。東京都副知事でまた作家の猪瀬直樹は、東京電力の「天下り」を指摘し、そこにムダが発生している事実を追求している(「東京電力「天下り全リスト」公開『週刊文春』4月26日号」。

 その記事を読むと、面白いほど中央官僚たちの手法に似ている。例えば中央省庁の官僚たちは、天下りを一回だけではなく数度繰り返す。受け入れ先は特殊法人全般であったりする。天下りをするたびに「相談役」だとか肩書きだけの「理事」とかになり、高額の給料やまた数年で膨大な退職金を得る。これを何度も繰り返すことを「渡り」という。ちょうど、大陸と日本の間を行きかう渡り鳥のような習性から名付けたのだろう。
 さすがにいまでは中央官僚の天下りの世界にはみられなくなりつつあるが、僕がその昔みた官僚の天下りはすごかった。当時、公務員関係の本を編集していて(あ、大学の先生の前は大学院生、さらにその前はニート、その前は編集者で“渡り”してましたw)、その取材で都内のあるオフイスビルを訪ねた。そこは広大なワンフロアを占有する特殊法人で、その理事は元高級官僚だった。正直、何をする特殊法人だったか忘れた。タコ焼きを売っていようが、電力を販売していようが、それは問題ではない。そこで目にしたのは、だだっぴろいフロアに人間が二名。入口近くに座っている受付の女性(超美形)と、そこからカーペットがまるでアカデミー賞の授賞式のように引かれていて、10数メートル先ぐらいにもうひとつの理事の机がある。その前には簡単な応接セット。それだけのある意味でがらんどうのような広大な部屋だ。ほかにも職員がいるはずだが、そのビルのほぼワンフロアをぶちぬいてその理事と秘書だけの部屋がつくられていた。もちろん当時はその特殊法人を支えていたのは、私たちの税金だ。まさにムダ金の典型であった。

 天下り自体は実は悪いものではない。報酬だってやってる仕事と見合えばいいだろう。ところが多くの天下りはただのムダな活動をサポートしているにすぎない。ただムダを削減することが、そのまま天下りの廃止ではないことには留意しないといけない。

 例えば、経済学の「通説」のひとつでは、日本の高級官僚たちの現役時の給料はかなり低く抑えられている。例えば、東京大学の法学部を出た人間が、財務省の現役時に手に入るお金と、他の一部上場の大企業(商社や銀行など)に入った場合お金とを比べると、現実として後者の方が圧倒的に高い。で、やってる仕事を同じくらいのレベルとしよう。高級官僚としては、こんなに低い給料で、同じくらい働いて、わりに合わないと思うのは本音だろう。高級官僚たちだって、僕らと同じで四六時中、日本のためだ、と思って安月給(安いというほどでもないがw)で我慢して働くにも限度がある。そこで退職して天下り先で、安かった月給の分を頂戴するという「後払い保険」みたいな制度として、天下りを捉える考えがあるのだ。もちろんそのときの前提は、国民にさほどムダが発生しないということだ。だが、先ほど紹介した特殊法人の天下りのケースは、まさにムダのなにものでもない。そんなムダがいまだに特殊法人、公益法人などで政府の許認可をバックにしたりして、いまだに継続しているのがわが日本の本当の姿だろう。

 さて東電の「天下り」の方だが、これは猪瀬氏の記事によれば、この「天下り」「渡り」に便利な構造になっている。東電本社を中核にして、それをとりまく膨大な子会社群168社、さらにそれをとりまく関連会社の群97社、さらにそれを小宇宙のようにとりまく会計上はゼロ連結だが、人的金銭的につながりが強い関連会社群がある。東電の部課長級含めて、それらの子会社や関連会社やゼロ連結関連会社へ「天下り」や「渡り」が繰り返される。

 仕事の大半は東電からの随意契約によるもの。つまり競争原理が成立しないのでここでムダが発生しやすい。東電という独占価格でムダな料金徴収をすることができる企業のムダは、このような子会社や関連会社に配分されていく。それをチューチュー血を飲むように吸っているのが、この東電のファミリー企業群であり、その東電からの天下りアンド渡り役員たちである。

 例えば、村上春樹氏は、東電の経営が競争を優先するあまりに、安全を軽視したがゆにえ、福島原発事故を起こしたと海外の講演でいった。でも本当のところは、ムダな経営手法が、安全性の軽視に至ったという見方が正しいと指摘する声が多い(原田泰『震災復興 欺瞞の構図』新潮新書など)。例えばいまや多くの人が指摘しているが、本来の原発の発電コストはそれほど他の発電源に比較して低くない。むしろ今回のような事故の「保険料」を繰り込んでおくと割高だろう。いままで安く偽装できたのは、この「保険料」をちゃんと東電が独占力を利用して価格に繰り入れてこなかったせいもある。また発電コストが割高であることを隠していたのは、監督官庁や東電グループなどの利権ゆえだった可能性が大きい。

 あれ? 今回はちゃんとアイドルではなく、本誌の特色に合わせた電力ネタになったじゃないか? この調子で次回に続くw