日本は長い間、閉塞感にとざされている。
いまや日本は「絶望の国」と呼ばれ、若者達の未来に暗い影を落としている。

明日をよくするには、どうしたらいいのだろうか。
日本を「希望の国」に変えるにはどうしたら良いのだろうか。
それには、現在の理解が不可欠だ。
今がわかってこそ、どこを変えれば、明日を良くすることが可能となるからだ。
さらに言えば、今を知るために、過去をしらなくてはならないだろう。
日本が良くなるには、個人的な過去ではなく「歴史」というものが大事になってくる。

 

子供のころから「歴史」が好きだった。
いまとなっては「好き」というより、自分の思考の根底にあり、自分自身を形づくるものといって良いかもしれない。
「歴史」とは、一定の関心や価値判断に基づいて、選択された過去の事実である。
それ故、問題意識の違いで「歴史」の中に、発見できる事実も違う。
だから、他者と「歴史」を共有するには、それなりの共通基盤が必要となる。

History とは his + story 彼の物語である。
ヘロドトスや司馬遷の描く物語が、歴史ということだ。
日本人の多くが司馬遼太郎の描く坂本龍馬を真実の龍馬と考えているが、それもある種の伝説と虚構である。
義経千本桜に描かれた義経と同様の「英雄譚」である。

そう考えると、ヤマトタケルやスサノオ等を例として、英雄譚でつづられる古事記・日本書紀も、一定の理解に基づいて描かれた日本の歴史書である、ということが理解できる。

古事記・日本書紀を神話世界のお話として片付けるのではなく、当時の人々の社会理解ということも含めて読み直しが必要なのだ。
もし、日本という国にアイデンティを持つのだとしたら。

 

こんなふうに歴史について説明をしはじめると、果たして、共通理解可能な歴史というものが存在しえるのだろうか、と不安になる。

歴史を共通認識可能にするための一つの方法に、数値化がある。
歴史の流れの中で、ある指標を中心にデータをとり、時代ごとに数字に置き換えていく作業である。

その好例を二つ紹介しよう。
一つは、鬼頭宏『人口から読む日本の歴史 』(講談社学術文庫 (1430)) [文庫]
日本列島における人口の変動の歴史である。
長期にわたって、ゆっくりと増加し、明治以降爆発的に伸びた。
その様が見て取れる。

もう一つは、アンガス・マディソン『世界経済の成長史1820‐1992年―199カ国を対象とする分析と推計』
世界各国の歴史的の流れをGDP経済成長という数値で置き換えて表した本である。
人口の話は分かりやすいだろう。

 

特に、明治以前はこの狭い国土の中で、農業生産力が拡大することで人口が増えていく様がよく分かるからである。国力が伸びるとはこういうことか、とも思う。
一方、「世界経済の成長史1820‐1992年―199カ国を対象とする分析と推計」は、一般人にはわかりにくい内容だ。
特に購買力平価によって、世界各国のGDPを推計することなどできるのだろうか、と思ってしまう。
これは基準年と基準の通貨ドルを採用し、各国通貨を「購買力平価」に置き換え、また物価に合わせて時代を捉えることを試みた大変な労作である。

もともと、世界銀行の仕事として始まったこの調査は、発展途上国のGDPを計測する能力が根底としてあった。
市場があまり発達していない、経済活動も低調な国々でGDPを世界銀行が推計する。
それらの国に生きる貧しい人々の生活水準を少しでも向上させていくには、どうすれば良いかが世界銀行の大きな目標だったからである。

 

「最貧困人口は減少傾向にあるが依然として脆弱、と世界銀行」
http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/JAPANINJAPANESEEXT/0,,contentMDK:23130864~menuPK:515520~pagePK:1497618~piPK:217854~theSitePK:515498,00.html

 

先に紹介した本を見れば、様々なことが見えてくる。
日本もかつては貧しい国だった。
一人当たりの所得というものが、いかに大きなテーマとなっているかということ。
世界銀行では、それを着実にのばしていくことを標準的な経済政策としていること。

日本は最高のお手本だった。この本の調査対象であった1992年までは。

この本を元に、1992年以降の日本を教えてくれるwebサイトがある。

「一人当たりの歴史的推移(日本と主要国)」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4545.html

 

イギリスから始まった産業革命(近代化)は、人類の生活水準向上に役立った。
産業革命以前から人口の多い大国で、近代化が進むとそれは爆発的成長となっている。
そんな中、世界の平均的成長率から、日本は凋落していっている。

日本の衰退と混乱の真の理由を数値で見せてくれる重要な内容である。
理解できることは、名目GDPの成長をばかにしたり、あきらめたりしてはいけない、ということだ。
少なくとも、それは世界銀行というグローバルスタンダードの機関では、相手にされない。

 

もし、明日を良くしようとしたら、一人当たりの名目所得を増やしていくことだ。
まず、それを確認することから始めないといけない。
私たちは、世界の中の一つの国、日本なのだから。