「要するに、何屋さんなんか?」
サラリーマン時代に、新しい企画を提案するたびに上司によく言われたことである。誰のための何屋さんなのか。これが定義されていない商品・サービスは総花的になってしまい、誰も喜ばないものになってしまうのだ。しかし、世の中にはこれが明確じゃないものが多すぎるのだ。
その原因はターゲットとマーケットを勘違いしているからではないだろうか。マーケティングに関わってる人にとっては釈迦に説法だし、別に私オリジナルの話ではなく、諸先輩から学んできたことではあるが・・・。ターゲットとマーケットは違うのだ。
先月、『僕たちはガンダムのジムである』という本を発表した。発売されてからもうすぐ3週間。おかげ様で売上は好調と言っていい状態のようで、重版がかかったし、お店からの追加注文もいっぱいらしい。それこそ、大型書店からは1店で150冊(!)もの追加注文があったそうで。感激だ。
この本もそうだし、やはり今月、発表した白河桃子さんとの共著『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』についても指摘を受けたことなのだが・・・。
「ターゲット狭すぎませんか?」
とよく言われる。
私はこう言いたい。
「それの、どこが悪いのですか?」
と。
ターゲットを絞り込むと、マーケットまで狭くなってしまうと考える人がよくいる。まあ、普通はそう考える。でも、ターゲットを絞り込むことのどこが悪いのだろう?ターゲットとマーケットは違うのだ。それを勘違いして、無難な商品を作っていないか?顧客満足度を下げていないか?このターゲットとマーケットを勘違いしないで考える。これは私が諸先輩方から学んだ仕事術である。
『僕たちはガンダムのジムである』についてだが、出版社から教えてもらったデータによると、POSでは、ほとんどが20代~40代の男性だそうだ。実に読者の80%は男性らしい。いや、女性が読んでも満足してもらえる内容だと思うし、実際、高いご評価を頂き、ご満足頂いているのだけど。でも、最初は男性中心でいいんだと思う。
いつも学生向け、若い人向けの本を書いてきた私だけどの、この本は私の同世代に語りかける感じで書いた。まあ、ちょっと広げても40代半ばくらいからアラサーくらいの人向けに書いた。しかも、ガンダムを読んだことがある人という前提で書いた。その人にまず手にとってもらって、ご満足頂くということを主な目的とした。
ここがブレると、誰でも読んでもらえそうで、誰も手にとらない本になる。
さらに言うならば、ここでの提供価値が明確であれば、他の層にも広がるわけだ。
例えば、ベストセラーになり、ドラマ化までされた漫画『ドラゴン桜』(三田紀房 講談社)だが、大学受験というものを徹底的に描いているのが特徴だ。ただ、それだけだと受験生やその前後にしか広がらない。ものすごく狭く捉えると、今、人口は出生ベースで1学年120万人強であり、大学進学率は50%をこえたくらいだから、浪人生を合わせたとしても読者対象となりそうなのは毎年100万人をこえないくらいである。
ただ、そこで描かれている「人が人を育てる」ということは、普遍的なものだと言える。それこそ、育児とは人が人を育てることに他ならないし、職場における上司・部下、先輩・後輩の関係だってそうだ。だから、『モーニング』というビジネスパーソン向けの漫画雑誌で受けたのだろう(ちなみに、このエピソードのネタ元は、担当編集者だった佐渡島氏のインタビュー記事+ご本人から直接聞いた話である)。
白河桃子さんとの共著もタイトルは『女子と就活』だ。これだけで考えると、毎年、就活生は45万人程度。そのうち、仮に女子が半分としたら22.5万人程度。その中で、今時、本を積極的に買う人がどれだけいるか、さらに私たちの本を選んでくれる人がどれだけいるか・・・。こう考えると暗くなるが、女子×就活で嫌な思いをした人がいっぱいいること、女性の雇用は日本の今そこにある課題であること、女子の気持ちを持ち続けている人がずっといることなどから、市場はあると見ている。だからこそ、あえてマーケットよりも先にターゲットということを掘り下げて考えるのである。
ターゲットを絞り込み、提供価値を明確化する。このことは別にマーケットを絞るという話ではないのだ。マーケットということを意識し続けた総花的な無難な商品・サービスこそやめるべきではないか。
ターゲットとマーケットは違うのだ。