デフレ派の主張が正しいなら、世の中が彼らの理論の予測する通り動いていけないといけません。彼らが人々を怖がらせるために言っているとしか思えない4つの論点について、実際にその予想が当たっているのか外れているのか検証してみましょう。
「金融緩和アブナイ!」と主張されていることで有名なこの人の主張が一番まとまっていたので、主要な4つの論点について考察します。


主張1


「第1に、日銀が直接コントロールできるのは、超短期金利であり、長期金利には影響を与えることが状況によって可能なだけで、インフレ率が上昇しているような局面では、それはかなり難しく、無理してインフレを起こした場合には、不可能となる。」


もしこの説明が正しいなら大規模な金融緩和を行った欧米各国ではすでにコントロールできない長期金利の上昇が観察できるはずですが、実際にはどうでしょう?この発言がウソかホントかはみなさん自身が確かめてください。マネタリーベースをリーマンショック以降4.5倍にまで急増させたアメリカの10年国債利回り(=長期金利)は現在以下のように推移しています。



主張2
「第2に、実体経済において重要なのは、長期金利であり、これが上昇してしまうと景気には大きくマイナスだが、リフレはまさにそれを起こすことになる。」


長期金利が上昇したとしても、同時にインフレ率が上昇すれば実質的な金利に変化はありません。なぜデフレ派の人は名目金利と実質金利の区別をしないのかは全く謎です。よほど都合が悪いのでしょうか?実質金利は以下のような単純な引き算で求められます。


実質金利=名目金利-物価上昇率


仮に長期金利が3%まで上昇したとしても、物価上昇率が3%なら上記の公式に当てはめると実質的な金利はゼロになります。住宅ローンなどの負債を抱える「庶民」にとってマイルドなインフレは債務の負担軽減に他なりません。しかも、現金の価値は目減りするわけですから、タンス預金を溜め込んでいる醜いブルジョアは狙いうちで課税されているのと同じです。
借金というリスクを取ってでも何か新しいものを作り出したいと思っている人もマイルドなインフレで救われます。
ということで、金利だけを針小棒大に取り上げて、物価上昇率というパラメーターを無視することは極めて非対称な偏った議論の組み立て方だと思います。
ちなみに、無制限金融緩和を宣言した欧米各国の物価上昇率の推移は以下の通りです。


アメリカ
イギリス
スウェーデン
ドイツ


主張3
「第3に、長期金利を高騰を避けるために、国債を日銀が直接引き受けにせよ、市場買い入れにせよ、多くの投資家が売りに回ったときに行えば、それは投機家の圧力に屈することになる。これは、まさにソロスがイングランド銀行をポンド投機で打ち負かしたのと同じ状況である。」


→イングランド銀行はポンド安を防衛するために、手持ちの外貨準備高によってポンドを買い支えました。しかし、外貨準備高には限界があるので、ジョージ・ソロスなどの投機筋に足元を見られ、弾切れになるまでポンドの売り浴びせを食らいました。
現在の日本の場合は状況が逆さまです。日本は未曽有の円高に苦しんでおり、むしろ円が売られて円安になることが望ましい状況です。分かりやすく考えるために、仮に日本銀行が投機筋と円売り介入で戦うと仮定しましょう。日銀は日本円をいくらでも刷って供給することができます。無尽蔵の弾丸があると言っても過言ではありません。投機筋が円高を狙っていくら円を買い進めても、日銀が無限の円売り介入を行えば必ず円安にして投機筋を打ち負かすことができます。
実際に、スイス中央銀行はスイスフラン高解消のためにこのような自国通貨売りの介入を行い、投機筋を打ち負かしました。
この主張の間違いを指摘するなら、「イングランド銀行と日本銀行の立場は正反対である」という点に尽きるでしょう。
逆に、多くの投資家が円売りしてくれるなら円安になるわけですから今の日本にとっては大変望ましい状況になります。仮に、円安が進み過ぎて困るなら、白川さんを呼び戻した再びデフレ政策に回帰すればすぐに円高に戻るでしょうw
イギリスはマネタリーベースが4.5倍になるような大規模金融緩和を行いましたが、その後通貨が暴落したのか検証してみましょう。対ドルレートの推移は以下のようになります。


ポンド/ドルチャート(1ポンド=○ドルというグラフ。現在はポンド高。)
参考までにユーロ/ドルチャートについても掲載しておきます。
さて、制御不能の通貨安って一体世界のどこで起こっているのでしょうね?


主張4
「第4に、このときには、円安も急激に進行することになるが、いわゆる、債券安、為替安、株安のトリプル安になる。金融市場は混乱、崩壊し、このような状況では、実体経済においても投資をする主体はなく、資金は海外へ逃避、企業活動も移転する。」


円安が進行したら株価は上がります。ここ数日為替が2円ほど円安に振れただけで大幅な株価の上昇があったという事実がすべてを示しています。例えば輸出企業の決算を考えた場合、1円の円安が与える利益へのインパクトは相当なものになります。1ドル90円だったらルネサスもシャープも潰れなかったと言われているのはそのためです。(シャープは経営再建中ですが、敢えてこう表現しておおきます。為念。 2012.12.16追記)
何をどうしたら円安と株安が同居できるのか?おそらく、景気が良くなりすぎて、需要が旺盛であるにもかかわらず無理やり金融緩和してお金を刷りまくればそういう弊害が出るという話なのではないでしょうか?この点についてイェール大学の浜田宏一先生は自民党の安倍総裁に送ったFAXの中で次のように述べています。


「ゴルフにたとえれば、今の日銀は雇用改善、景気回復という目標のホールを目指さずに、ホールの向こう側には<ありもしない>崖があると称して、バンカーに入ったボールをホールの方向に打たない、あるいはパターでしか打たないゴルファーのようなものです。」
(全文はこちらでご覧ください http://www.twitlonger.com/show/k3k8qr


自民党安倍総裁が選挙公約としてリフレ政策を実施すると宣言してから、円安、株高、債券価格横ばいという状況が続いていることをデータで検証しておきましょう。


ドル/円チャート(誰がどう見ても円安)
株価指数チャート(誰がどう見ても株高)
TOPIX
日経平均
長期国債利回り(短期的には低下、長期的にはどう見ても横ばい)


まとめ
デフレ派の主要論点を実際に市場のデータに基づいて検証してみました。
さて、みなさんの目には金利の暴走、通貨の暴落が見えましたか?もしそれが見えてしまった人は、なるべく早く眼科の診察を受けられた方がいいと思います。早めに直さないと大変なことになってしまいますよw




なぜこういうデタラメを言う人がいるのか?その理由を知りたい人は是非この本をお読みください。
『歴史から考える 日本の危機管理は、ここが甘い 「まさか」というシナリオ (光文社新書)』
http://a.r10.to/hJoqXZ