安倍新政権で内閣官房参与に任命されたイェール大学の浜田宏一教授。
その浜田教授の最新刊は『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)だが、こちらは2010年に刊行された著作。
浜田氏の単著である『アメリカは日本経済の復活を知っている』と比べ、本書は経済評論家の勝間和代氏が生徒役となり、対談形式で経済学の本質を学ぶものとなっている。

講義形式の対談本というと、生徒役の聞き手がうまく講師からよいコメントを引き出せるかが作品の出来を左右するが、その点本書では勝間氏が自説を述べたりすることなく、生徒役に徹しているため大変読みやすい。
その上、浜田氏に加え経済学史が専門の若田部昌澄氏が講義を補佐しているため、難解な経済学を初歩からやさしく理解できる内容となっている。

本書で解説されている経済学は極めてオーソドックスなもので、経済学をきちんと学んだ読者にとって新奇な部分は少ないかもしれない。
けれども、「なぜ日銀はデフレを放置してきたのか?」という多くの国民が抱くであろう疑問に対して著者の三人がその理由を推測する場面は興味深い。

浜田 (前略) 日本銀行のもう1つの問題は、インフレに対する姿勢とデフレに対する姿勢が非対称なことです。インフレのことは、「これはたいへんだ」と騒ぐけれども、デフレのことは何でもないように振る舞います。これはもしかすると自分たちの影響下にある短資会社の利害の問題のせいかもしれませんし、デフレで相対的に得をする富裕な人の利益を代表しているのかもしれません。
勝間 アメリカにも、日本の短資会社に当たるような会社はあるのですか。
若田部 日本銀行のレポートによると、アメリカでは短期金融市場の半分くらいはブローカーを経由して調達されているようです。なので、短期資金を扱う会社があるのは事実ですが、トップが中央銀行から天下り、市場関係者によってそのことが重視されると思われているという意味での、日本のような短資会社は存在しないのではないでしょうか。
勝間 既得権業者としての短資会社に囲まれているわけですから、日本銀行としてもそこに利益誘導しなければいけないという歪みが入るわけですね。

これらの推測に対し、それを裏付ける確たる証拠があるわけではないが、なかなか説得力のある説ではないだろうか。

本書は、単行本版に加え、最近人気の電子書籍端末「kindle」版も刊行されており、紙版に比べ廉価に購入することができる。
この年末、kindleを購入されたかたに、最初の一冊としておすめしたい作品である。