「建設業の生産労働者の年収が全産業平均より70万円安い」と主張する人が根拠として挙げるこのプレゼン資料ですが、実は学歴による格差をそのまま反映したしょうもない資料である可能性があります。以下の仮説について本当かどうか検証したいので、データのある人は是非ご提供ください!!

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/dl/s0517-13a_0005.pdf

よく見るとすごく重要なことに気づきません?「建設業の生産労働者」と「全産業(全従業員)」比較してるじゃないですか!

一般財団法人建設業振興基金 が 平成 25 年 5 月に行った調査によると、学歴別の入職状況は以下のようになっています。(数値は%)

学歴 全産業 建設業
大学・大学院 23.2 27.4
高専・短大 8.3 3.0
専修学校 13.4 10.0
高校 46.8 46.5
中学 8.4 13.0

ソース
http://www.shinko-web.jp/assets_c/2013/06/250605_04_data.pdf

これは平成25年の入職者の学歴なので、大卒が今より人数も割合でも少なかった古い時代には高卒、中卒の割合はもっと高かったでしょう。よって、全年齢で構成比をみた場合、高卒、高卒の割合は6割を超えていると推定されます。平成25年の状況でも高卒、中卒の割合は全産業で約55%、建設業ではほぼ60%です。
さて、問題の調査は建設業に従事している人から「生産労働者(現場で働く作業員)」を分離したとのことです。普通に考えて、現場作業員の学歴に大卒の割合は少なく、高卒の割合はさらに増えることになります。
つまり、「生産労働者(現場で働く作業員)」を分離することは、建設業の高卒者中心の賃金統計を作ることと同じ意味になる可能性があります。
この仮説が正しいなら、大卒を含む全体の統計と意図的に高卒者中心に抽出した統計を比較することになるので、学歴別賃金格差がそのまま反映してしまいます。仮にそうだとしたらどれぐらいバイアスかかるか調べてみました。

そもそも大卒と高卒ではかなりの賃金格差があります。平成25年賃金構造基本統計調査(厚労省)より、結果の概要の一部を抜粋しますのでお確かめください。

(以下引用)
学歴別に賃金をみると、男性では、大学・大学院卒が395.4千円(前年比0.8%減)、高専・短大卒が298.8千円(同1.6%減)、高校卒が283.2千円(同0.9%減)となっており、全ての学歴において前年を下回っている。女性では、大学・大学院卒が281.3千円(同0.5%減)、高専・短大卒が244.6千円(同0.7%減)、高校卒が200.9千円(同0.2%増)となっており、高校卒が前年を上回っている。
(引用終わり)

ソース
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2013/dl/03.pdf

何と、男性の場合、大卒と高卒の賃金は1か月あたり10万円以上の開きがあるんですね。ざっくり年収で120万円以上の差があります。賃金構造基本統計調査にはボーナスなどが含まれていないのでその分も加えると賃金の格差はもっと拡大します。
建設業全体に占める高卒、中卒の割合は元々全産業より多く約60%ですが、これを生産労働者(現場で働く人)に限ってみれば、その割合はもっと多くなります。仮に建設業の平均より2~3割増しだったとすると、その比率は約72~78%ぐらいということになります。この数字は全産業に占める高卒、中卒の割合約55%に比べるとかなり多い数字です。統計を歪めている可能性が排除できません。
ということで、最初に紹介した厚労省の資料は賃金の学歴格差がそのまま反映している可能性があります。この可能性を排除して初めて「5年前、建設労働者の年収が全産業平均より70万円安かった」と主張できます。

ぜひ、この仮説を検証したいので様々なデータをお寄せください。建設的な議論をしましょう!!

ちなみに、「民間企業における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等に明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的として」1949年(昭和24年)から実施している民間給与実態統計調査(国税庁)によると、1989年(平成元年)以降建設業の年収が全産業平均を下回ったことはありません。全産業に比べて高卒、中卒比率が最低でも5%以上高いにも関わらずです。この事実をしっかり押さえておきましょう。

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2012/minkan.htm

言っておきますが、私は公共事業万能論者ではない公共事業推進派です。不正確なデータをベースに、公共事業推進ありきで誤った原理主義的主張を繰り返すのはいかがなものでしょうか?それではデマを流しているのと同じで、私のような真の推進派にとっては迷惑な話です。デマを吹聴する人は、結果的に公共事業推進の足を引っ張る可能性が高いと思います。実際に建設会社の皆さんはかなり厳しい状況に追い込まれてますよ。秋田から生の声が届いてますので、お読みください。

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建設業勤務です。
はっきり言って、公共事業を景気対策の一環としてやられると迷惑です。
そっちの都合で供給力なんて増やせませんって。
最悪の状況を経験して、人も設備も減らしまくってなんとか耐えてきたのに、いきなり仕事持ってきて「さあやれ、不落にすんな」だと?
建設業だって馬鹿じゃないんですから、その後の崖を見越して保守的に経営しますよ。
(続きはこちら→ https://www.facebook.com/tsukasa.jonen/posts/636983889682999?stream_ref=10
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バカすぎる味方は敵以上の脅威です。こんなことでは、我らが輝ける民族の太陽、史上最強の財務次官であらせられまする木下康司大元帥閣下に笑われますぞ!!www

追記
その後、国土交通省の資料から以下のような衝撃的データを発見しました。
なんと、建設業における生産労働者の賃金が1987年のバブル前からずっと全産業平均を大幅に下回っていたのです!!
以下2つのグラフを比較してみてください。

出典
http://www.mlit.go.jp/common/000228336.pdf

この2つのグラフを比較して言えることは次のような衝撃的事実です。
・1987年から1997年にかけての年収格差は拡大し、1997年から2011年にかけては縮小した。
・1987年から1997年にかけての建設投資、就業者数は拡大し、1997年から2011年にかけては縮小した。

全産業平均と建設業の生産労働者の賃金格差の推移(上記グラフから抜粋 単位:千円)

1987 1997 2011
全産業平均 4,426 5,751 5,268
建設業生産労働者 3,198 4,357 4,018
格差 -1,228 -1,394 -1,250

結論
データを虚心坦懐に眺めれば、「年収格差が拡大するほど建設投資、就業者数が増え、年収格差が縮小すると建設投資、就業者数が減る」という衝撃の事実が明らかになってしまうわけです。
つまり、このデータをベースに議論する人は、解決策として工事単価を下げろというべきなんですが、なんで反対の結論になるんでしょうか?そもそも、厚生労働省の賃金基本構造統計調査をベースとして「格差がーー!」と議論すること自体が無意味に思えます。

ちなみに、これはあくまで仮説ですので、後ほど元データを入手して回帰分析してみようと思います。お楽しみに!