気鋭の評論家、古谷経衡氏が本書で主に取り上げているのは、本のタイトル同様、実際に日本の若者たちは右傾化しているのかというテーマである。

確かに近年、週刊誌やネットのニュースの見出しを見れば、中国、韓国といった日本と領土問題、文化的摩擦を抱えた国への攻撃的な言説が目立つような印象がある。

では、実際に、日本人、とりわけ若い世代は右傾化したのであろうか。

結論を先取りして言えば、その答えは「否」である。

その論拠としては、本書の中で古谷氏が紹介している各種調査や、やや古いが辻大介氏らによる調査

http://d-tsuji.com/paper/r04/

や田辺俊介氏らによる調査

http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/interview/publishment/tanabe_2011_12.html

にも、近年の日本人のマジョリティの心性に右傾化の傾向がないことがはっきりと表れている。

こうしたアカデミズム内部における調査の結果がどれだけジャーナリズムの中で共有されているのかはわからないが、私が本書の中で強い関心を持ったのは、「日本の若者は右傾化しているのかどうか」といった命題ではなく、古谷氏が赤裸々に語っている彼の生い立ちと、貧困問題へのまなざしである。

本書によれば、古谷氏は高校時代にパニック障害を発症し、大学時代、また自営業者としてバリバリ働き、比較的稼ぎのよかったゼロ年代前半は症状が寛解していたものの、リーマン・ショック以降の日本の景気の悪化と相関するように経済状態は苦しくなり、またそれと因果関係があるのかは不明だが、持病も悪化したと語る。

こうした古谷氏の経験は、彼をして「つまり、人は後天的な努力だけで社会的成功をつかみ取るわけではないのと同じく、『後天的な自己責任』だけで、貧困や非正規雇用に零落するわけではない」という結論に至らしめる。

ここから古谷氏が危惧するのは、現在の保守論壇、及び自民党政権が再分配政策に極めて冷淡、および消極的なことである。

経済政策を考える際に、再分配政策が極めて重要であることは、このReal-Japanの執筆陣の一人でもある片岡剛士氏も常々指摘していることである。

http://synodos.jp/newbook/3504

これまでにない大胆な金融緩和によって幸先よくスタートしたアベノミクスは、デフレ下における消費税増税という悪手を選択してしまったことにより、現在絶体絶命の危機下にある。

このアベノミクスを再び軌道に乗せるためにも、政府はより積極的な再分配政策に取り組む必要があるだろう。もし、そうしないのならば、「アベノミクス」はゼロ年代前半の中途半端な金融緩和と脆弱な再分配政策という「小泉・竹中路線」となんら変わりのない経済政策となってしまうのである。

これまで、貧困問題といえば左派である雨宮処凛氏や、湯浅誠氏の独壇場であった。

本書を読んで、古谷氏のような保守派とされる論客から、鋭い再分配政策の提言が現れてきたことに驚くと共に、日本の未来に対して、心強いものを感じた。