「ユダヤ人はローマ帝国に全滅させられた。ハザール国の国王がユダヤ教に改宗して、ハザール国民がユダヤ人になった。今のユダヤ人はユダヤ人ではない。」という全く根拠のないヘイトスピーチをする人がいます。ユダヤ人が聞いたら絶対怒るでしょう。「日本人は元寇で全滅して、今の日本人はモンゴル人が連れてきた朝鮮人」なんて言ったら日本人はどう思いますか?

裏の取れない情報は鵜呑みにしないこと。
ハザール人ネタを一掃するために、歴史的な事実を確認しておきます。

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ハザールはチュルク語系民族。7~11世紀初頭にかけて王国を築いた。
 紀元740年ごろ、ブータン王がユダヤ教に改宗した。以後国家中枢部の人々がユダヤ教徒になった。周囲をビザンチン帝国(キリスト教)と東ハリハ(イスラム教)に囲まれていたため、独立性を保つためユダヤ教を国境にしたが、一般住民はユダヤ教徒のみならず、イスラム教徒、キリスト教徒、その他の宗教を信じる者が多く、雑多であった。
 東ハリハを破ってイスラム勢力を食い止め、またビザンチンとも友好関係を築くなどして、最盛期を迎えるが、10世紀後半に入ると没落の時を迎える。
  最終的には首都イティルが陥落し、紀元1016年に消え去った。今ではカスピ海を別名ハザール海という名が残っているのみ。
 滅亡後住民は散らばり、その土地の宗教に改宗していった。たとえばハンガリーではコザルやコザルディ等ハザールの名残りと言われる地名があり、皆キリスト教徒となった。トルコや中央アジア、エジプトに移った人々もいる。
 次に「ハザールの末裔=アシュケナズィ」についての反論です。
 アラブやキリスト教の反ユダヤ・反イスラエル主義者がプロパガンダのために「アシュケナズィ系はハザールの末裔」などという説を吹聴し、日本で不勉強な連中がそれに乗っかっているが、何の根拠もない話です。
 ① ユダヤ人はすでに1世紀にはハザールを含むクリミアの地域に共同体を持っており、ブータン王がユダヤ教に改宗したということは、すでに周囲にユダヤ人が多く存在していたということ。またユダヤ教を国教としたことにより周囲からユダヤ人が流入した。つまり「ユダヤ人と関係のないハザール人がユダヤ人となりそれが今のアシュケナズィの先祖」ではなく、ハザール王国のユダヤ教徒はもともとのユダヤ人が多くいたということ。
 ② 次にハザールの習慣や言語が今のアシュケナズィ社会に残っていない。イーディッシュ語(主にドイツ語をベースにヘブライ語を混ぜて作ったアシュケナズィ系ユダヤ人の人工語)にもチュルク系の言葉はほとんど見られない。
 ユダヤ人の名前にもチュルク語系の名は見られない。ユダヤ人に多い「コーガン」はハザールの「カガン」だとする主張があるが、「コーヘン(ヘブライ語で祭司の意)」が起源だとみて間違いない。なぜならウクライナ語などではHとGが入れ替わることがよくある。例えばヒルシュ⇔ギルシュ、フロドノ⇔グロドノなど。
 ③ 東欧のユダヤ人は中世、十字軍やペストなどの疫病や虐殺、追放により中央アジアから流入してきた人が大部分。ユダヤ史を学ぶと追放・移動の繰り返しで11世紀初頭に滅んだハザール一国の末裔のみがアシュケナズィなどということはありえない。

(情報提供 マアヤン・リナー主宰 児玉直純氏)