東京アイドル劇場が一周年を迎え、2月27日、28日の二日間でそのメモリアル公演を行った。東京アイドル劇場は、ノトフとピストル(敬称略)のふたりの日本でも著名なアイドル通によって運営されている個性ある劇場だ。後方に立見席があるものの、基本は座席であり、アイドルを至近距離からじっくり鑑賞することに適している。

 また各アイドルのステージごとの入れ替え制で、その持ち時間も30分という、個々のアイドルの魅力と実力が存分に楽しめる構成になっている。また出演するアイドルも、熟達したアイドル眼が選んだだけあり、全国各地の注目のアイドルたちが揃っているのも見逃してはならない点だ。実際にこの二日間の公演を通しで楽しめば、日本の先端的なアイドルたちを鑑賞することが可能である。ふらっぺidolぷろじぇくと生、アモレカリーナ東京、Star☆T、トーキョー夢ぴよ組、Kin?Gin?Pearls、フルーティー、オレンジポート、渡良瀬橋43+43X、mImi、GALETTe、すずもも、ピンク・ベイビーズ、Hauptharmonieが今回出演した。

 さて今回、私が注目したのは二日目の公演に登場したGALETTe(ガレット)である。GALETTeは四人組の女子アイドルグループで、メンバーは、ののこ(20歳)、古森結衣(18歳)、藤田あかり(16歳)、野田怜奈(19歳)で構成されている。彼女たちの履歴の特徴は、過去に別のアイドルグループに所属し、その後GALETTeに結集したことにある。例えば、古森はHKTと10COLOR’Sのメンバーであった。食べ物のガレットと同じで、共通する生地の上に様々な由来をもつ食材を彩どり豊かに配して構成しているともいえる。

 2013年結成に九州博多で結成され、その後東京に拠点を置いてからはまだ一年ほどだ。だが、東京アイドル劇場のキャパが埋まるほどのコアなファンを持っていて、また15年年末ではZepp DiverCity TOKYOで単独ライブを行えるだけの広い人気も有している。

 GALETTeについては、オリジナルメンバー(村山しほり、保坂朱乃、四島早紀)のうち、村山が昔QunQunのリーダーであったことから、私は興味を抱いた。QunQunも九州のアイドルグループで、何回か一緒にイベントをする機会があったからだ(ただし村山とはQunQun時代になぜか接点がない)。
 アイドルも経済学の観点からみれば「市場」のひとつである。

 例えばアイドルの運営は、アイドルというサービスを売ることができると思っている人たちと契約を結ぶことで「雇用」する。運営はアイドル労働の買い手であり、アイドルたちはアイドル労働の売り手である。このときアイドル労働の価格(報酬)は、買い手の意欲(労働需要)と売り手の意欲(労働供給)が一致するところで決まる。もっとも実際には、運営側の交渉力のほうがアイドル側よりも上回っていることが一般的であり、運営側の有利な条件で契約が決まることが多い。

 ただしライブアイドルの世界をみてみると、多くの運営は個々のアイドルの脱退(卒業)に比較的に寛容であり、またアイドルたちもひとつのアイドルグループを卒業した後に別のグループに移ることも多い。これは例えば、大手芸能事務所では観察することが難しい現象だ。それら大手事務所では、移籍やまた契約満了後の活動について厳しい制約が契約面や、またテレビなどの業界の慣行で行われていることが一般的だろう。ライブアイドルの市場では、それが比較的に緩やかなのは、逆にいえばそれだけライブアイドルたちに運営側が人的投資を蓄積してこなかった証拠ともいえる。

 例えば、何年にもわたって歌やダンスのスキルを向上させるために投資を行ってきた運営にとって、その投資を回収する前に他のグループに移籍されることは致命的だろう。ただしアイドル志望者たちがさまざまなアイドルに間を自由に移動することは、市場の活性化にとってはメリットにもなる。

 この連載は「ライブアイドルの経済学」なので多少、それらしいことを書いてしまったが、実際にはGALETTeの東京アイドル劇場でのライブの魅力について書きたいのだ。

 特にオリジナルメンバーの最後のひとりだった四島早紀が1月下旬になって突如の卒業を表明し脱退した(その後、彼女は別のアイドルグループを結成することになる)。これは私にもかなりの驚きであった。年末の大規模なワンマンをおえて、いよいよ武道館公演を見据えて飛躍するのではないか、と思っていたからだ。四島の抜けた穴はどうなるのだろうか? それはGALETTeに興味を持ってる多くの人の関心事であったろう。

 しかし東京アイドル劇場でのライブは、四人のメンバーのまさに息もつかせぬ怒涛の迫力で押し切るすばらしいものだった。代表曲のひとつ「じゃじゃ馬と呼ばないで」で力強くはじまり、 「JUMP! for a dream 」、新曲の「LET ME DANCE」、 「Believe 」、「Candy pop」 、そしてこれも新曲の「ソニックファイター」とMCをほとんど入れずに一気に歌い上げた。通常の対バンと違い、30分の長めの持ち時間はアイドルの実力をかなり厳しく見せることになる。しかしGALETTeにとっては、30分などある意味で、軽いならし運転のようにさえ思える。それだけ実力があるのだ。私に楽曲解説の能力があればいいのだが、残念ながら彼女たちのライブそのものを見てもらうしかない。

 GALETTeの特徴である少女たちの疾走感とでもいうべき爽やかさはあいかわらず健在だ。ちなみに彼女たちの魅力には、その独特のMC力もある。ののこ、古森のふたりのその面の楽しさは、私もある程度はわかっているつもりだが、新規加入のふたり(藤田、野田)がどんなMCの個性があるのか、そこにこれから注目していきたい。

ガレット公式HP http://galette.asia/